十一話 ページ12
外に出た私の肌を冬の始まりを感じさせるような冷たい風が撫でる。
そんな風に、私の心はキュッと締め付けられるようだった。
ゆっくりと息を吐くと、白く染まったそれは空に消えて行く。
そんな息を見ながら空を見上げた。
私「こんな風に消えてくれたらいいのに...」
そう小さくつぶやいた言葉は白い息と共に空へ飲み込まれた。
その様子を物悲しげに微笑みながら眺め、重たい足を引きずりながらいつものカフェへ向かう。
私「あれ、沢渡くん？」
私は見覚えのある後ろ姿に声をかけた。
沢「おー！Aさんっ、お久しぶりっす！」
突然声をかけられた沢渡くんは驚いた様子で振り返り、私の顔を見ると頬を緩ませ元気よく頭を下げた。
私「今暇？ちょっと付き合ってよ」
沢渡くんを誘い二人でコーヒーを飲むことにした。
沢「俺苦いのダメなんでココアで！」
私「子供みたいっ」
沢渡くんの注文にケラケラと声をかげて笑ってしまった。
沢「何言ってんすか！ココアは子供だけの物じゃないんすよ！」
私「はいはい」
彼の抵抗は虚しくも軽くあしらってしまう。
少し拗ねた様子の彼とコーヒーを二つ手にしてカフェの近くのベンチに腰掛ける。
私「相変わらずやってるの？」
沢「まぁ、ぼちぼちっすかね....！」
私「警察にも追われてるんでしょ？」
沢「そうなんすよ、一回捕まったことのあるりゅう...何とかって刑事にこの間は見つかって！あの時は焦ったわ〜」
恐らくイクオの事を言っているのであろう。
私「なんかやばいものでも見たんじゃない？」
私は鋭い視線を彼に向けた。
沢「いやぁ、やばいっていうか...、人が落とされるとこをみっちゃったというか....」
私の視線から逃れるように目を泳がせる沢渡くん。
私「落とされるねぇ....、詳しく聞かせて？」
先ほどの鋭い視線から、今度は上目遣いで沢渡くんを見つめた。
必殺、色仕掛けだ。
沢「っん、と....、あの日は.....」
沢渡くんはあの事件現場で見た事を全て話してくれた。
私「なるほどねぇ.....」
竜也に知らせなければと思い私はポケットからケータイを取り出した。
段「おっせーよ」
不意に聞こえたその声のした方向をパッと見上げた。
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作者名：翠晶 | 作成日時：2022年1月5日 0時
