3話 ページ4
〜丑嶋〜
車を出してから、暫くは沈黙が車内を埋め尽くしていた。
あみは俯きながら腕をさすっている。
丑「......、結婚してたんだな。」
あみはいままで開こうとしなかった口をゆっくり開く。
『........っ、無理やり入れさせられたのよっ！』
隣に座る彼女の腕に爪が食い込む様子が見えた。
俺は無意識に彼女の手を掴んだ。
丑「無理に話さなくていい。取り敢えず俺の家来い。傷の手当てもする。」
俺の言葉に彼女は俯いたまま涙を溢す。
男のせいで酷い目に遭ってきた女を何人も見てきたが、彼女が知り合いだからなのかとてつもない怒りが自分を支配している事に気がついた。
ハンドルを握る手に力が入るのを悟られない様に平然を装う。
家はオートロック式のマンションの5階。
寝るためだけ帰ってきている部屋の中は必要最低限の物しか置かれていない。
丑「そこ、座れ。」
素直に従いソファにちんまりと座る彼女。
部屋に置いていた救急箱を手に彼女のそばへ寄る。
優しく彼女の頬を撫でると、んっ...、と顔を歪ませる姿に眉を潜めるが、すぐに表情を戻し消毒液をつけたガーゼを傷口に当てる。
消毒液が滲みて痛い様だが手を止めない。
顔、腕、足と順に消毒と湿布や絆創膏を貼っていく。
丑「腹と、背中にもあるだろ。見せてみろ。」
『えっ....、でもっ。』
恥ずかしがる彼女を他所に俺は服をまくり上げる。
丑「........、終わったぞ。」
相変わらずソファにちょこんと座っている彼女に問いかける。
『ありがとう....。』
丑「この部屋気にせず使え。後、飯食いたくなったらこれで買え。近くにコンビニもスーパーもあるから。」
丑嶋はお札を五枚ほどあみへ渡す。
彼女はそのお札と睨めっこをした。
『.......、本当にいいの？丑嶋くんの邪魔にならない...？』
とても不安そうな表情を浮かべている彼女に昔のように優しく微笑んだ。
丑「ふっ、要らない心配はするな。俺は仕事に戻るが不用意にドアは開けるなよ。後、携帯これ使え。俺の番号入ってるからなんかあったらかけて来い。」
小さくうなずく彼女を確認するといつもの足取りで事務所へ戻った。
あみは慣れない部屋に一人ポツンと取り残されなんとも言えぬ孤独と夫への恐怖が一気に押し寄せてきた。
その気持ちを落ち着かせようと一人ソファにうずくまる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
由良の門を - 社長こんなかっこよかったっけ？主人公ちゃんを大切にしてる感がめちゃ好きです♪頑張ってください！！ (11月5日 0時) (
レス) @page13 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
翠晶(プロフ) - しおらんさん» 読んでいただきありがとうございます...！頑張りますので最後までお付き合い頂けますと幸いです！ (2022年4月17日 6時) (レス) id: 4b3f971a43 (このIDを非表示/違反報告)
しおらん(プロフ) - 凄く好きです！マサルも…好きすぎる…。完結まで頑張ってください！！ (2022年3月23日 22時) (レス) @page31 id: d42d8a020d (このIDを非表示/違反報告)
翠晶(プロフ) - めいさん» ありがとうございます！！ゆっくりの更新ですがちゃんと完結できるよう頑張りますので最後までお付き合い頂けると幸いです！！ (2021年8月31日 13時) (レス) id: 4b3f971a43 (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - 好きな作品で読んでいてすごく面白く続きが気になります。更新頑張ってください (2021年8月30日 21時) (レス) id: e56d417d92 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翠晶 | 作成日時：2021年1月8日 21時
