VII ページ8
｢お母様！｣
｢A？どうかしましたか？｣
｢シェンメイお母様が…｣
詳しく手紙の内容を話すと、お母様は私の話を丁寧に聞いてくださった。
｢分かりました…つまり、Aは暗夜に行くのですか？｣
｢はい、闇夜を照らす光になりたいです｣
きっとそれは、暗夜の王族になれという事。
でも私が？
｢貴方は暗夜の王族にも向いているでしょう。ですが、タクミを残すのには理由があるのですか？｣
｢アクアの為だそうです｣
｢なるほど…｣
｢私は今から暗夜王国に渡ります｣
｢A、貴方の健闘を祈っています｣
｢はい｣
私はすぐに身支度を整えた。
と言っても、あちらに何かしらはあるだろうし、着物や浴衣など、白夜の民から頂いたものは全て貰うことにした｡
｢姉様、本当に行かれるのですか？｣
｢ええ、ヒノカ。私は暗夜王国に行かなくてはならないの｣
｢う…うぅ…！｣
｢泣かないの、ヒノカ。今度は、貴方が白夜王国第一王女になるのよ｣
｢私は、姫としてもまだまだです！まだ民にも信用されておりません！なのに…なのに…うぅ！｣
｢ねぇヒノカ、姫に一番大切なものは何だと思う？｣
｢え…？｣
｢美しさ、凛々しさ、可愛らしさでもないのよ。｣
私は、姫であったけれど、やはり一番大切なのは見た目では無い。
｢それはね、民を愛する心なの｣
｢愛する…心？｣
｢お母様が手本よ。王妃や姫は、王や王子のように前に出て元気を出させるような仕事はしないのよ。王妃、姫は月のような存在であるべきなの｣
｢月…ですか？｣
｢月も太陽も、どちらもいないと成り立たない。そのような関係はまるで、お父様とお母様…｣
｢お父様と…ミコト王妃が？｣
｢ヒノカが割りきれていないのは知っているわ。でもね、あの方を母としてではなく、王妃として見てみて。そうすれば、少しは割り切れるようになるはずよ｣
｢…姉様、ありがとうございます。私、少し元気が出ました｣
この笑顔…
まさしくヒノカだわ。
でも、フウマの忍びが言っていた野望…
白夜は敵…
もうすぐ、戦になるかもしれない。
その時は、姫はどうあるべきなのだろうか。
ヒノカも勇ましく戦闘に立たされるのだろうか。
｢…では、そろそろ行くわ｣
｢姉様…！｣
｢カムイとタクミとサクラをよろしくね、ヒノカ｣
｢姉上！｣
｢リョウマ…｣
｢…お元気でいてください｣
｢…2人共、今度からは私を王女と呼ぶのよ｣
｢｢…はい｣｣
私は振り返らず、前に進んだ。
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作者名：なこもち | 作成日時：2021年6月26日 18時
