検索窓
今日:14 hit、昨日:1 hit、合計:29,546 hit

12 ページ13

『お兄ちゃん!』

「A」



それはもう遠い昔に無くなった、穏やかな日常。今はそれを願うことすら、諦めている。

私と同じ黒髪をした4つ上の兄は、とある特殊な高校に通う人だった。
全寮制で人が少ない宗教系学校。当時の私はまだ幼く、兄の通う学校に疑問を抱くことは無かった。



「───それでね、悟が────悟は────」



悟。五条悟。

兄は長期休み辺りでいつも家に帰ると、学校の話をする時によく口にする人の名前。親友なんだ、と兄は照れながらも教えてくれた。



『お兄ちゃん。五条悟ってどんな人なの?』



顔も知らない兄の友人を妬ましく思いつつも、私はそう兄に聞いた。

兄曰く、五条悟は無駄に見た目がよく無駄に性格の悪い人、らしい。いじめっ子とかなのだろうか。
でも心から楽しそうに話す兄を見て、その言葉が本心でないというのは私にも分かった。

いつかうちに連れてくる。それが最後に聞いた兄の言葉だった。











人は変わる。そして人を取り巻く世界も変わる。

不変とは全くのファンタジーで、フィクションでしかない。



『……お父さん?お母さん?』



残暑。
帰宅した私を迎えてくれたのは両親ではなく、噎せ返る程の生臭い匂いと、色濃く残る兄の気配。

無意識に息が浅くなる。全身の穴という穴から汗が吹き出し、言い知れぬ恐怖が私を取り巻く。
私の本能が警告を告げていた。進んでならぬと。見てはならぬと。


けれども私はそれを無視した。いや、聞くことが出来なかった。

それは私がまだ、幼かったからかもしれない。









『お父さんっ!お母さんっ!!』



冷たい親の身を揺する。けれども瞼は固く閉じたまま。
私に触れている温もりは、両親から流れ出た命の液のみであった。






そこは分岐点だ。幾度も別れる道の中で、どれを選ぶかを決められるもの。
私が今後幾度となく繰り返すことになる、全ての引き金。

ここはまだ、スタートラインに過ぎなかった。

13→←11



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (91 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
261人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

天乃(プロフ) - ちょー面白いです!さいこう! (2022年3月14日 20時) (レス) @page13 id: 0d8f1d3fb5 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - シオリさん» <( 'ω^ )かしこま⌒☆ (2022年2月23日 18時) (レス) id: 65f092b365 (このIDを非表示/違反報告)
シオリ - エマ・ワトソンって名乗っている子は『』を使ってもらえると見やすくてありがたいです🙇‍♀️作者様の漢字よくわかんなくて教えてもらって良いですか?!😳🙏 (2022年2月23日 14時) (レス) @page3 id: 36ddcc805a (このIDを非表示/違反報告)
- だいだいだいだい好きです笑 (2022年2月21日 22時) (レス) id: 08adf0175c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:蝋燭 | 作成日時:2022年2月21日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。