下剋上その13 ページ14
「よいですか、A。今日は五条家が我が禪院家へとやってきます。決して部屋から出ないように」
『分かりました』
ってまぁ守る気ないけど。
私は女中が去った後、サラリと部屋を抜け出し庭の方へと向かう。まだ術式について調べたいからだ。
道中、五条家のことについて考える。
五条家は私でも知っている…というか知ってて当然なのだが、禪院家と肩を並べる呪術界御三家の一つだ。
禪院家は呪術至上主義。加茂家は保守派の中心。
そして五条家は時として呪術界の頂点に君臨する輝星、という極めて不安定な家系だと私は考えている。
けれど禪院家と五条家の仲は────これ以上ないくらいに最悪だ。
原因は江戸時代、時は慶長。
当時の禪院家の術師と五条家の術師が御前試合を行ったことでその軋轢は生まれた、とどっかの蔵の書物で読んだことがある。
一体何が原因でそんなことがあったのか。
めちゃくちゃ気になるけど、御前試合をやったってとこまでしか読めなかったんだよなあ。
今度掃除を建前にまた忍び込もうかな。
禪院家の庭の方へとやってきた私は、なるべく屋敷の方から見えない位置で持ってきた紙飛行機を飛ばす。
よくある戻ってくる紙飛行機の作り方はしていない。普通の簡単なやつだ。
(戻ってこい!)
そう念じると、紙飛行機がクルリと回ってもどって─────こなかった。
『あれっ?念じれば叶うとかいうチート能力じゃないのか……』
てっきり願えば叶うみたいな術式かと思ったのだが、どうやら違うらしい。
念じ方が違うのか、それとも呪力の込め方がおかしいのか…。
クソ!どうせ転生したならチート能力欲しかった!!
がっくりと肩を落とした私は、紙飛行機が飛んでいってしまった方向に向かう。
屋敷の方に飛んでちゃったっぽいな。まあ今頃接待で人も少ないだろ。
「───なあ。これお前の?」
『あ、はい!そうですそうで───』
私にそう声をかけてきたのは、白髪に碧眼の少年だった。
その少年を見た途端、無意識にヒュっ、と私は息を詰まらせる。
ぶわりと滝のような汗が流れ、猛獣でも前にするかのように私の手足が恐怖で震えた。
なんだ、この子供。明らかにおかしい。
その威圧感。その底知れない”異質さ”。
今自分が前にしているのは人間なのだろうかとすら考える。いや、生き物という括りすら合っているのかも分からない。
私は今、化け物の前に立っている。そう自覚するまでに少しばかり時間を要した。
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アリス(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです( ˙˘˙ ) (2022年3月10日 23時) (レス) @page14 id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - ボーダーラインさん» そう言って貰えて嬉しいです!応援ありがとうございます!頑張ります! (2022年3月10日 17時) (レス) id: b5fe911f2a (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - キャプションで食いついて一気に拝読させて頂きました。あー主人公の性格好き!「下剋上して♡」の団扇とペンラを振りながら読んでしまった…。甚爾に最後で爆弾を投下していくスタイル、いいですねぇ。五条との邂逅も気になる〜!ペンラ振って更新待ってます!! (2022年3月10日 16時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - アリスさん» ありがとうございます!がんばります! (2022年3月9日 18時) (レス) id: b5fe911f2a (このIDを非表示/違反報告)
アリス(プロフ) - 更新待ってます!! (2022年3月9日 5時) (レス) @page8 id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蝋燭 | 作成日時:2022年3月7日 21時