下剋上その0 ページ1
それは、頭部を勢いよく蹴られたことがきっかけだった。
「女のくせしてシャシャってんじゃねーよ」
「おいやめろってお前、死んじまったらどうすんだよ」
「はっ、これくらいで死ぬんならどっちにしろくたばるだろ」
この家でのカーストは生まれた時に決まる。男か、女か。たったそれだけ。
そして私は、後者に属す人間だった。
『い、だっ…ご、ごめんなさ……』
「ハハッ!モロに顔面クリーンヒット!」
「あーらら。綺麗なお顔が鼻血で台無し。せっかく顔はいいのになあ」
幼いながらの正義心に身をまかせ、いじめられていた黒髪の人を助けようとしたのが運の尽き。
相手は私なんかより何回りも大きい男二人だ。あっという間に返り討ちにされ、いじめの標的は私へと切り替わっていた。
痛い、痛い、痛い、痛い。
生まれて初めての激痛に見舞われ、恐怖か、それとも痛みからかは分からないが、とめどなく涙が溢れ出す。
見えないけれど、たぶん血もだ。
「…おい、そろそろ訓練の時間だ。油売ってないで早く行くぞ」
「お、ホントだ。早く行かねーと隊長に怒られちまう」
『ハー……ハー…………』
「このガキはどうする?」
「あ?ソイツに治療させときゃいいだろ。できるよなぁ?甚爾」
「……あぁ」
「ほらな。早く行こーぜ」
視界がかすみ、痛みで思考がぼやける。全身を取り巻くような激痛が、染み込むように私の体を蝕む。
あーあ…私、”また”死んじゃうのかな……。
(……”また”?)
「おいお前、大丈夫か」
自分自身でもわからない思いに、現実の世界から思考が遠のく。
”また”って何?なんでそんなこと考えたんだろう?私、一回も死んだことなんてないのに。
次の瞬間。唐突に私の頭に何かが流れ込んだ。
まるでせき止めていたダムが一斉に流れ出したかのような感覚に、思わず頭を抱える。
何、なんだ、これは。
私が驚愕の声をあげる間もなく、情報を処理しきれない脳が私の意識を断ち切った。
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アリス(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです( ˙˘˙ ) (2022年3月10日 23時) (レス) @page14 id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - ボーダーラインさん» そう言って貰えて嬉しいです!応援ありがとうございます!頑張ります! (2022年3月10日 17時) (レス) id: b5fe911f2a (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - キャプションで食いついて一気に拝読させて頂きました。あー主人公の性格好き!「下剋上して♡」の団扇とペンラを振りながら読んでしまった…。甚爾に最後で爆弾を投下していくスタイル、いいですねぇ。五条との邂逅も気になる〜!ペンラ振って更新待ってます!! (2022年3月10日 16時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - アリスさん» ありがとうございます!がんばります! (2022年3月9日 18時) (レス) id: b5fe911f2a (このIDを非表示/違反報告)
アリス(プロフ) - 更新待ってます!! (2022年3月9日 5時) (レス) @page8 id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蝋燭 | 作成日時:2022年3月7日 21時