9撃目 ページ12
「全く…無断で部を変えるとは何事ですか!宿題忘れや先生の呼び出しを無視するなど、貴方はもう少し己の素行を見直しなさい!」
「はぁ……」
「返事ははいです!」
「はい」
かれこれ十分。退部届けを出しに合唱部顧問の島崎のところへ行ったら、何故か成り行きで説教が始まった。厚化粧のこの女教師は嫌味ったらしくガミガミと捲し立てる。
(やべぇ…学食で食った唐揚げが歯に挟まってんのクソ気になる……)
「変部は許可しましょう。ただし反省文三枚書いてきなさい」
えぇ、と私は見るからに落胆する。
その拍子に挟まった唐揚げも取れた。心はどんよりだが、歯はスッキリである。
「何について書けばいいんですか?」
「当然普段の目に余る行動の反省点と、合唱部の皆さんに迷惑をかけた責任です」
「迷惑って…別に私一人が抜けたところで大して迷惑なんかかかんないんじゃ…」
途端に島崎の顔つきが険しくなる。
「そういった言葉が出るということは反省していないようですね。もう一枚追加です」
「えぇ……」
本当のことを言っただけなのに、何故か罰が増えた。島崎に四枚の原稿用紙を渡され、職員室から追い出される。
面倒臭いなぁ、世の中って。
スタスタと靴の踵を踏んだまま下駄箱に向かう。校庭からは悠仁の言っていた高木との勝負を行っているのか、歓声が聞こえてきた。
「すげー盛り上がってんな…」
校庭の人だかりを見て思わずそう零す。
(……それにしても、勝負か……)
正直、私はこの力を持て余している。拳一つで山を消し飛ばせようとも、数時間もかかる距離を数秒で駆けることが出来ても、怪人などという人類の敵がいないこの世界では必要のない力だ。ヒーローという存在は画面の中にしか存在せず、近所の人やクラスメイトからは白い目で見られる事が殆どだった。
強い奴と戦ってみたい。そんな思いは常日頃から私の闘争心を燻らせる。世界を守り、人類を守り、悪を淘汰する。どんなに白い目で見られようと、この意志だけは曲げられない。まぁ馬鹿にされること自体はどうでもいいことこの上ないんだけど。
「あっ、やべ!もうすぐセール始まっちまうじゃねーか!」
私は勢いよく地面に踏み込み、一気に駆け出す。スーパーの主婦達に狩り尽くされる前に行かなければ!
(なんだ今の、風か…?)
黒髪の青年が後ろを振り向いて、怪訝そうに首を傾げた。
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まゆ(プロフ) - ドストライクです!更新待ってます (2月16日 21時) (レス) @page13 id: 808ea90ce0 (このIDを非表示/違反報告)
ぬう(プロフ) - 尊き (7月12日 16時) (レス) @page13 id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
なつ。(プロフ) - 面白すぎます…!これからも頑張ってください!!続き待ってます! (2022年2月7日 0時) (レス) @page13 id: ea9f89257f (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 面白いです😂続き楽しみです🎶頑張ってください🎌🔥応援してます!! (2022年1月13日 23時) (レス) @page13 id: 91b6b6a73d (このIDを非表示/違反報告)
ん - あけましておめでとうございます!更新ファイトです、応援してます! (2022年1月3日 20時) (レス) @page12 id: 82356caa87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蝋燭 | 作成日時:2021年12月3日 1時