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六月某日の深夜の学校。その森閑とした空間に、二つの影が立っていた。
一人は満身創痍で立つことも儘ならない青年、伏黒恵。もう一人は目の前にいる傷だらけの伏黒を気遣う上裸の青年、虎杖悠仁。
気遣う虎杖に反して、伏黒は彼への警戒の色を隠せないでいた。それもそのはず、今さっき伏黒の目の前で彼の体に″あの″呪いの王が受肉を果たし、鏖殺だのなんだのと豪語したのだから。
一方で虎杖は、自分に向かって明らかに警戒し身構える伏黒に戸惑いを浮かべる。
暫くして伏黒は意を決したように口を開いた。
「呪術規定に基づき、虎杖悠仁、お前を────
──────呪いとして祓、「おい悠仁ー!お前今日晩飯当番だろ!」
場にそぐわない咎めるような声が、二人の間にあった緊張感を壊す。伏黒と虎杖は同時に声の主の方を向いた。
「姉ちゃん!!」
虎杖は驚いたように声を上げ、姉と呼んだ女性に駆け寄っていく。伏黒は突然現れ平然としている虎杖の姉に面食らい呆気に取られた。
伏黒は数秒でハッとすぐに気を取り直し、再び身構える。然し親しげに会話をしている姉弟を見て、決めたはずの決意は再び曖昧なものに戻ってしまった。
結局伏黒は再び宿儺が暴れだしそうになったら次こそは……と考えて姉弟───主に虎杖の方──を注視した。
そして思う。コイツ本当に姉か?と。伏黒は自身の義理の姉と虎杖の姉を頭の中で比べ、不躾にもそう思った。
然し当然だ。『OPPAI』というダサい所ではないロゴの入ったパーカーに、青色の古臭いジーンズ。そして大雑把に結われた白髪。女性らしさが欠片も感じられず、伏黒は一瞬男かと思ってしまった程だ。彼女の身長が高い方である事も原因の一つかもしれない。
姉……という事は女子高生、または大学生なのだろうが、およそ女性のする格好ではないというのが伏黒の感想であった。
「ったく、お前なー、若気の至りってのも別にいいけど、晩飯当番なのは忘れんなよ」
「いやこれには色々と事情が……つーかなんで姉ちゃんここにいんの?」
「悠仁が病院から帰ってこねーから病院に聞いて迎えに来てやったんだよ……ってお前!何パーカー破ってんだコラ!!服は安くねーんだぞ!!!」
「ごめんなさい!!!」
怒鳴る姉と謝る弟。どうやら上下関係はハッキリしているようで、至って普通の姉弟である。すると不意に、ある虎杖姉の一言で二人の間の空気がしんみりとしたものに変わった。
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まゆ(プロフ) - ドストライクです!更新待ってます (2月16日 21時) (レス) @page13 id: 808ea90ce0 (このIDを非表示/違反報告)
ぬう(プロフ) - 尊き (7月12日 16時) (レス) @page13 id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
なつ。(プロフ) - 面白すぎます…!これからも頑張ってください!!続き待ってます! (2022年2月7日 0時) (レス) @page13 id: ea9f89257f (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 面白いです😂続き楽しみです🎶頑張ってください🎌🔥応援してます!! (2022年1月13日 23時) (レス) @page13 id: 91b6b6a73d (このIDを非表示/違反報告)
ん - あけましておめでとうございます!更新ファイトです、応援してます! (2022年1月3日 20時) (レス) @page12 id: 82356caa87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蝋燭 | 作成日時:2021年12月3日 1時