約束_80 ページ28
「えー、一緒に寝てくんないの?」
なんて、客人用の敷布団の上でニヤニヤと笑うクロの表情は、先程までとは違ってスッキリしているように見えた
少なくとも、そんな冗談を言えるくらいには
「バカ言ってんじゃないの。寝る訳ないでしょーが」
「あらそう?残念」
「全く、そういうのは彼女とかに言いなさいよ」
モテるんだからさ、と言いながら
そういえば、クロのそういう話を聞いた事がないな、と考える。まぁ、海と夜久のもだけど
「アンタ等なんで彼女作んないの?モテるでしょ?」
「んぐっ!ストップAちゃん、それ以上俺を傷つけないで」
「はぁ??」
「俺達の恋人はバレーボールだから!いいの!!」
「ふーん?」
ちょっと聞いただけなのにそんな大きい声出さなくても……
聞かれたくない話題だったかな
わたしはクロと違って、察するのが苦手だからなぁ
「そういうAはどうなんだよ?」
「わたし?」
「好きな奴とか、……いねぇの?」
”好きな奴”ねぇ……
「うーん、考えたこと無いかも」
「えぇ〜、高3にもなって〜?」
恋バナって、苦手だ
自分の知らない世界の話をしてるみたいで、疲れる
いつも考えない事を考えるからだろうか
「いつも、バレーか、クロ達の事しか頭にないもん」
「それにしたって、なんかあるだろ〜?」
「無いよ。クロだってそうでしょ?」
「そうとも言いきれないかもよ?」
なんて、意味深な顔で言ってくる
さっきまでのは何だったんだってくらいの余裕だな
元気になったなら良いんだけどさ
「はいはい。明日も練習あるんだから早く寝よ」
「なぁ、A」
「ん?」
「あんがとね。……やっぱ俺にとってお前は、”特別”だよ」
「!」
”クロの中の”特別”になりたいなぁ、なんて”
合宿で、潔ちゃんに言った事を思い出す
少しでも、そうなれたのなら、嬉しい
「ふふっ、それは光栄だね」
今度、潔ちゃんに報告しなきゃ
試合に勝って、春高に行くという報告と一緒に
そう決意して
遂に、東京都代表決定戦の時がやって来た
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作者名:ama | 作成日時:2024年3月20日 1時