約束_79 ページ27
「確かに、わたし達をもう1回繋いだのはバレーだったけど、でも、それしかない訳じゃない」
彼の、前髪に隠れた瞳を見つめる
人の気持ちを察するのが得意なくせに、自分の気持ちも素直に言えない不器用な男
そんな彼が、自分に話してくれた心の内
不安だと言うなら、そうではないと教えてやる
「バレーは好きだし、バレーしてるクロを見るのも好き。楽しそうで羨ましいって思う。だけど、この3年間、バレー以外の思い出もいっぱいある」
クロや海、夜久達との思い出は確かにバレーばかりだったけど、一度きりの高校生活、”宝物”と言えるのは、皆と一緒に3年間を過ごせたからだ
「わたし達の”3年間”は、もうすぐ終わる。でも、わたし達の関係は終わらない。これから何があったって、ずっとずーっと、わたし達は”仲間”だよ」
それを教えてくれたのは、クロだった
こんなクロを見たら、海も夜久も、きっと怒るだろうな
「クロのお陰で、そう思えるようになった。一緒に目指そうって、言ってくれたから。だから……、だから、クロが教えてくれた事を、クロが否定しないでよ」
そんな風に、思わせてごめん
助けてもらってばかりで、ごめん
わたしだって、支えれるから
だから、もう少し頼ってよ
もう少し、信じてよ
「居なくならないよ。……少なくともわたしは、これからもずっと、一緒に居たいよ」
彼の瞳を見て、はっきりと伝える
一度は忘れようとした、彼の手を握る
これから先
以前の様に、距離が離れてしまう事はあるだろう
それでも、クロを捨てようとする事は、きっと無い
彼が、わたしを捨てない限り、きっと
「だから……、っわ!」
続けようとした言葉は、引っ込んでしまった
クロの大きい体が、わたしを包んだから
「……クロ?」
「ごめん。ちょっとだけ……、このままがいい」
ぎゅぅっと、抱きしめらる
声も、体も震えているくせに
それでも彼は、わたしの前で強くあろうとする
「謝んないでよ。ちょっとした我儘くらい、許してあげなよ。わたし達はまだ、子供なんだから。我慢、しないでよ」
彼はきっと、これまでも沢山我慢してきた
そうしなきゃいけない環境だったかもしれないし
そうする事で、自分を守ってきたのかもしれない
大丈夫だよ、と、クロが見ないフリをしてきたであろう、子供の彼に伝わるように、そう想いを込めてクロの背中に手を回した
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作者名:ama | 作成日時:2024年3月20日 1時