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約束_78 ページ26

「その前に、ココア。冷めちゃうよ」


「……あぁ、悪ぃ。さんきゅーな」



ココアを飲むクロの瞳には
先程の余裕は無いように感じた


今なら、聞けば答えてくれるだろうか



「ねぇ、クロ?」


「…………なぁに?」



わたしは、君の事を知りたいと思ってる

貴方が隠したい、わたしの知らない君の事

教えて欲しいな



「どっちでも、クロはクロだよ」



そう言って、彼の片手を握り
反対の手で、ぺちゃんこの髪を撫でる
合宿での、あの日の夜みたいに

いつも通りなクロも、そうじゃないクロも

どっちでも、わたしにとっては変わらない


主将で、仲間で、昔馴染みで

わたしを引っ張り上げてくれた人



「…………やっぱ、バレてた?」


「バレバレ。誰だと思ってんの?」



ずっと、ではないけど、隣で見てきたのだ
それくらい、わかるに決まってる



「いつも、ありがとう。たまには、誰かに頼りなさいよ」


「……頼ってるつもり、なんですけど?」


「出来てないからそうなってる」


「はは、ごもっとも」



握っていた手が離れて、今度は逆に握られる
しっかりとじゃなくて、そっと、指先だけ

こんなに小さく見えるクロは、初めてだ



「……春高予選、めっちゃ勝ちたいんだけどさ」


「うん」


「勝っても負けても、俺達の高校バレーはもうすぐ終わる」


「うん、そうだね」


「そしたら、怖くなった」


「なにが?」


「……バレーが無くなったら、また居なくなるのかなって」



握られた指先に、力が籠ったのがわかった
泣きついて、縋るような、そんな風に



「お前を繋ぎ止める”何か”が無くて、怖ぇの」



そう言うクロの声は、震えていた
前髪に隠れて、顔はよく見えないけど


あぁ、そうか

原因は、わたしだったんだ
バレーが無くなって繋がりを切ろうとした、わたしの


あの時に蒔いた不安の種が、彼の中で育ってしまった


わたしは自惚れていたんだ

あの時、助けられたのは、わたしだけだったのだ



「……クロ」


「なぁ、また俺の手の届かないとこに行っちまうの?」


「ねぇ、聞いて?」


「…………悪ぃ、ごめ「クロ!」っ!」



安心させてあげたくて、手に力を込めた

わたしもクロも、あの時とはもう違う

絶望していたわたしはもういないし

目の前にいるのは、大人にならざるを得なかったクロだ

だからこそ……



「バレーだけで、繋がってる訳じゃない」



伝えなければならない

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作者名:ama | 作成日時:2024年3月20日 1時

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