約束_77 ページ25
夜ご飯を食べ、諸々の片付けを終わらせ
現在、クロにとってはメインイベント
わたしにとっては修行イベントのホラー映画鑑賞会中だ
「うぅぅ…………ぅわっ！…………ぎゃああ！」
「いやお前、まだ序盤だけどそんなんで大丈夫かよ」
誘う為の口実だったとはいえ、怖いものは怖い
でも、友達とも仲良くなりたいので、頑張るしかない
色んな意味で、乗り越えなければいけない
「だ、大丈夫だもん。……ちょっと。離れないでよ」
「……いや、ウン。Aちゃんあのね？」
「くっついてると、怖いの紛れるんだから。近くにいて」
「んんっ！！………………ゴメンナサイ」
それ以降、クロは傍には居てくれたが
一切こちらを見てくれなくなった
そのまま、映画はエンディングを迎えた
「……面白かったな。もっかい観る？」
「…………もう観ない」
冗談だよ、なんて笑うクロは
最近のとは違う、いつも通りのクロに見えた
余裕があって、察するのが得意な、大人なクロ
残念だが、今日用があるのはそっちじゃない
「……ココア入れるけど、飲む？」
「ん、貰う。……なぁ、部屋見てもいい？」
「クローゼット以外なら」
そう言って、お湯を沸かす為にキッチンへ向かう
まぁ、同じ部屋の中なのだが
キッチンから見えるクロは
先程の言葉通り、部屋の中を探索中のようだ
「お！……バレーボール、持ってたんだな」
「お母さんが勝手に入れてたの。パスくらいならできるよ」
「まじか、今度やろうぜ」
置いてきた筈の、捨ててきた筈の、”バレー”
その”バレー”がこうやってまた、わたし達を繋ぐきっかけになってくれたのだから、不思議な話だ
再びクロを見ると
今度はベッド横の棚の上に置いてあるものを見ていた
「なぁ、この写真……」
「……その写真は、自分で持ってきたよ」
そこに置いたのは、バレー部に入ってからだけど
そう付け加えて
出来上がったココアを2つのカップに注ぐ
クロが引っ越す前、2人で撮った最後の写真
一度は置いてこようとした
けど、無理だった
結局わたしは、どっちにしたって
彼の事は、忘れたくても忘れらなかったのだと思う
「俺もこれ、部屋に飾ってる」
「……そっか」
「……なぁ、A」
”また、写真撮らね？”
そう言って手元の写真を見つめるクロの瞳は
なぜかわからないけど、とても不安そうに揺れていた
まるで、迷子の子供みたいに
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作者名：ama | 作成日時：2024年3月20日 1時
