約束_74 ページ22
「ってことで、どう思う？研磨」
家に帰り、ご飯やお風呂をそこそこに済ませてから、わたしと同じくクロの様子がおかしい事に気づいてるであろう研磨に電話をかけた
『だから、俺知らないって』
「そう言わずに！海と夜久に聞いても、何もわかんないし」
クロが変になって、1番最初に頼ったのは海と夜久だ
だが、2人からは”別に普通”という答えしか出てこなかった
絶対、”普通”じゃないのに
『うん。そうだと思うよ』
「……研磨も、”いつも通り”って思うの？」
『海クンとか夜久クンとか、他の皆の前では普通に過ごしてると思う』
「わたしと研磨の前でだけ変ってこと？」
『違う。多分Aにだけ。俺も初めて見た』
「え、そうなの？」
当たり前だけど、研磨の方がクロといる時間は長い
クロが引っ越してからずっと一緒なのだから当然だ
そんな研磨にも見せていない部分が、あったという事か
『だから力にはなれないと思う。ごめん』
「いいよ、しょうがないもの。でも、頼みの綱の研磨がこれじゃあ、お手上げかなぁ〜」
どうにかしたいのは山々だが、その手段が検討もつかない
『クロは……』
どうしたものかと悩んでいると、研磨が喋り出した
『クロはさ、どっちかって言うと世話焼きタイプだよね。甘えるより、甘やかしたいタイプ』
「あー、確かに。同じ世話焼きでも、夜久とは違う世話の焼き方だよね。なんかこう、娘に煙たがられる父親みたいな」
『ははっ。……うん、そんな感じ。いつも俺は、世話を焼かれる側だから、ああいうクロは珍しいなって思った』
「わたしもそう思う」
冗談っぽく駄々をこねる事はよくあるが
それはあくまで冗談で、だ
クロは良くも悪くも、聞き分けが良い
というかそもそも、注意されるような事をする時は、注意されるとわかっていてやる、そんな男だ
だからこそ、現状を持て余しているのだ
『クロが何を考えてあんな事してるかわかんないけど、Aになら話してくれるんじゃない？』
「聞いたって、素直に言うような奴じゃないじゃん」
『でも実際、Aにしか見せてない訳だから。多分クロは、俺にも話してくれないよ』
それは、そうだと思う
親しくても、弱みを見せないのが黒尾鉄朗という男だ
「……まぁ、頑張ってみる。ありがとね」
『ん、よろしくね』
そう言って、電話を切る
……どうやって、聞き出そうかねぇ
そう悩みながら、布団に入って目を閉じた
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作者名：ama | 作成日時：2024年3月20日 1時
