約束_8 ページ10
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『ってことで、このファイル持ち主に届けてくれ♡』
『どういうことですか先生』
『学校の来客の忘れもんだよ。体育館にいると思うから』
『そういうことを聞いてるんじゃないです先生』
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「はぁ……」
都合良く手伝わされ、都合良くパシられ中のわたしは
現在、届け先がいるという体育館に向かっている
「もう日が沈んじゃうよ」
体育館へ向かう道から空を見上げれば
空はもうほんのり薄暗くなってきている
耳をすませば運動部の掛け声や
吹奏楽部の演奏の音が聞こえてくる
こんな時間に学校にいるのは、久しぶりかもしれない
懐かしさを感じながら足を進めていると
気づけばもう体育館に着いていた
キュッ キュッキュッ
トーントーン
タンッ タンッ
少し前のわたしには”当たり前”だった音
今では、わたしを”苦しめる”音
やっぱり断れば良かった
そしたら、こんな思いせずに済んだのに
”人生1度きり、なかでも高校生活は宝物だぜ?”
そんな言葉を聞いて
不覚にも、捨てきれない醜い未練が揺れてしまった
「何してんのー?」
「うわぁあっっ!」
びっっくりした〜
背後から急に声を掛けられて、情けない声が出てしまったじゃないか
「そんなに驚かなくても……って、黒尾がマネに誘ってる子じゃん」
「あ、えっと、夜久くん?」
「そー、3組の夜久衛輔だ。よろしくな」
この人、初対面でそんな物怖じせず喋れるなんて強かだな
よろしくするつもり、あまり無いんだけど
でも、丁度良かった
夜久くんに渡してしまえば体育館に入らずとも済む
「……1組の天雲Aです。……あの、届け物があって」
「黒尾にか?」
「違う、クロじゃなくて」
えっと名前は確か
「ねこまたって人なんだけど」
「おぉーウチの監督じゃん!」
え、監督?
「中にいるから入れよ」
「あ、いやちょっ!待っ……」
ガラガラガラガラ
止める間もなく開けられる扉を見て
”クロに気づかれませんように”
とか、無意味なお願いをしたのはしょうがないと思う
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作者名:ama | 作成日時:2024年2月21日 12時