学園の不良グループ”蜘蛛” (ページ15)

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気持ち悪いヤツねページ15

〜フェイタンside〜

スタートから40分
廊下からスタートし、校庭、グランド、校舎

中、外を問わず追いかけているが
捕まりそうで捕まらない

いや、正確には
あの女が捕まるギリギリを楽しんでいるように見える

「お前、舐めてるか」

現在、3階の廊下
目の前を走るソイツに声をかける

この状況で楽しめる余裕を持たせる程
自分は手加減をしているつもりは無い

なんならだいぶ本気だ
普段付けているマスクを顎まで下ろすぐらいには

「いやいやいや！こんだけ走り回って息一つ切れてない奴を舐める程、わたしはバカじゃないよ！！」

いったいどこからその発言が出てくるのか
ヤツだってこれだけ走って息が切れていない

恐らく、スピードだけでいえば自分の方が上だろう
認めたくは無いが、僅差で

だが、それだけじゃない
この女、身のこなしが尋常じゃなく軽い

「もうすぐ1時間だけど大丈夫そー！？」

「ハッ、言てろ」

ﾄﾝｯ

走る勢いを落とさず跳躍し
ヤツの真横、窓側の壁に着地する

直接ヤツを狙わなかった理由は、既に失敗しているからだ

「じき終わるね」

「うわっ」

ﾋﾟｼｬﾝｯ

「チッ」

くそ、また避けられた
壁に着地したと同時に、教室の扉を開けて中に入られた

「だが、ここまでね」

「……わぁお」

奴がいるのは教室の窓側
対して自分がいるのは廊下側

出入口は抑えた
前後どちらに行こうとも、通すようなヘマはしない

「ととと諦めるよ」

「………楽しい」

「は？」

”楽しい”？この状況で？
コイツ馬鹿だと思っていたが、想像以上かもしれない

「ねぇ、名前、教えてよ」

「断るね」

「さっきの呼ばれ方、嫌なんでしょ？教えてくれないなら、ずっと呼ぶよ？」

「……………………フェイタン」

相手のペースに流されているこの現状に
僅かに不満を抱きながら答える

「フェイタン……ね。わたしはA。よろしく」

「それこそ断る」

「あははっ！ねぇ、フェイタン。わたし今すっごい楽しい」

”こんなに楽しいの、初めて”

そう言いながら、ヤツは窓を開けて、足をかけた

は？ちょっと待て
ここは3階だということを、コイツはわかっているのか？

そんな自分の疑問に答えることなく
Aと名乗ったこの女は、振り返り

自分に向かって、笑った

「フェイタン、わたしを捕まえてよ」

その言葉と共に思い出した
あの窓の向こうにある”モノ”を

「チッ！」

ヤツが飛んだのと、自分が駆け出したのは、ほぼ同時だった