この花を君に 6

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「最初、お姫様の送迎に
もう俺は使わないって
臣がキレてたんだけど、
笹野さん取られたから
そういう訳にもいかなくなったみたい」

「……あ、あの、
先日はありがとうございました」



隆二さんが病院まで連れてきてくれなければ、
私はお祖父様のご病気のことを
知らないままだっただろう。

慌ててお礼を言うと、
「どういたしまして」と答えが返ってくる。



「これでちょっとは罪滅ぼしになったかなぁ。
ずっと黙ってんの、しんどかったわマジで」



笹野さん同様、
隆二さんも広臣さんの命令で
お祖父様のことについて隠していたことに
心苦しさを覚えていたのだろう。

笹野さんが『今市くんには
感謝しなければなりませんね』と
言っていたことを伝えると、
隆二さんが苦笑したのが
バックミラーに映って見えた。



「けどお姫様を騙してたのは俺も同罪だしな。
ほんとごめん」

「あ、いえ、そんな。
言えなかった理由は理解できましたから」

「じゃあさ、臣のこと嫌いになってない？」



そう尋ねられて、返答に困ってしまう。

今の広臣さんは手もつないでくれないし、
他愛もない話もしてくれないし、
優しく微笑んでくれることもない。

『契約』に至った理由を話してから、
広臣さんが私を見る視線や
放たれる言葉は冷たくなった。

それが本来の広臣さんで、
優しかったのはお祖父様のために
私を利用したかったからだというのは
もう分かっている。

そのことに傷ついているのは事実だけど、
かといって嫌いかと聞かれるとそうではなくて、
複雑な感情に苛まれる。



「……むしろ、
嫌われているのは私の方じゃないでしょうか」

「えっ。そんなことある訳ないじゃん」

「だって……
見舞いに来るなって言われますし」

「それは万が一のこと考えてんじゃないかなー。
外に出るのは危険だから家にいてほしいんだよ。
どこで敵に会うか分かんないし」



隆二さんの言う『敵』が誰か分からなくて
首を傾げていると、
「あの女とかね」と言って
隆二さんはバックミラー越しに私を見た。

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