この花を君に 6

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「結局誰が
腹の子の父親なのかも
確定しねーし。
候補が複数いるから
誰かひとりに責任取らせるってことも
できなくてさ。
だからなおさら俺に固執するんだろうけど」

「困りますね……」

「まあ弁護士に丸投げしてるから
俺は大して困ってねーけど、
お前に危害が及ぶかもしんないのが
怖いんだよ」



眉をしかめながらそう言った広臣さんが
白い煙を吐き、灰皿に煙草を押しつける。

広臣さんが私の安全について悩んでいることは
心苦しいけれど、
心配してもらえるのはうれしい。

どきどきしながら端正な横顔を見つめていると、
「行くか」と呟いた広臣さんが
自然と私の手を取って歩き出した。

どきどきしながら喫煙ブースから出ると、
考え事をしているような顔で
黙り込んでいた広臣さんがふいに
「うおっ」と叫んだ。

つないでいる手を呆然とした表情で見て、
私に視線を移す。



「……今、俺、手つないだ？」

「あ、はい」

「うわ、完全無意識だったわ……ごめん」



気まずそうに視線を外して
広臣さんは手を離そうとした。

慌ててぎゅっと力を込めると、
怪訝そうに見つめられる。



「守ってくださるんですよね？」



そうねだると、広臣さんはなぜか
「ぐっ」と呻いて胸に手を当てた。

心配してくださっている
広臣さんの気持ちにつけ込むようで
少し気が咎めたけれど、
せっかく手をつないでくれたのに
離れたくなくて身を寄せると、
恨めしげに見つめられる。



「そんなんどこで覚えたんだよ……」

「え？」

「何でもない。行くぞ」



そう言った広臣さんが
手をつないだまま歩き出して、ほっとする。

柔らかくて温かな手の感触に
どきどきするけどうれしくて、
顔が緩みそうなのを堪えるのが大変だった。

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