この花を君に 6

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喫煙ブースの前まで行くと
広臣さんは私を連れて中へ入った。



「煙たいかもしんないけど、一応側にいて。
護衛がいても不安だから」

「あの、それは構いませんが
そこまで警戒されるのは
何か理由があるんですか？」



護衛の人がふたりもついているのに、
広臣さんは心配しすぎだと思う。

ブラックスーツの胸ポケットに
手を入れた広臣さんを
うかがうように見つめると、苦笑された。



「うーん……
根拠のある理由はないけど、
どんだけ警戒しても不安っつーか」



そう言いながら、広臣さんは煙草に火をつけた。

途端にバニラみたいな甘いにおいがして
広臣さんにくっついた時のことを思い出して
どきどきする。



「婚約披露パーティーの時、
トイレでアマリアに絡まれただろ。
まさかそこまでやると思ってなくて、
あの執念深い女のやることを予測できなかった
自分にすげー腹立ったんだよね。
香水の瓶叩き割るとか、
どう考えても普通じゃないじゃん」

「そうですね……」

「うちの親は金の亡者だけど所詮小物だから
嫌味言うくらいしかできないだろうけど
あの女は実力行使に出てきそうで怖いんだよ。
週刊誌の件で
世論は最初アマリアに同情的だったけど
こっちが否定して厳重抗議した上、
婚約は継続してるしじーちゃんは亡くなるしで、
今はアマリアの狂言なんじゃないかって
流れになってて。
誰も味方がいない状態で、
向こうはもう打つ手ないから
ヤケクソになって何するか分かんないし」



ため息を吐くように紫煙を燻らせ、
広臣さんは灰皿に灰をポンと落とした。

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