この花を君に 6

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「荷物は
使用人に運ばせたから、
後で部屋案内するわ。
先に佐野さんから財産のこと
説明してもらうからこっち来て」

「あの……山下さんと隆二さんは、」

「さすがに財産関係の話は
聞かせらんないから別の部屋にいるよ。
これ終わったら健ちゃんから社葬の話があるから、
長くなるけどがんばって」



そう言った広臣さんに促されて席に着くと、
富貴子さんがお茶と和菓子を運んできてくれた。

うさぎのお饅頭と菊花の練り切りが秋らしくて、
その可愛さに頬が緩む。



「ありがとうございます。いただきます」

「何かありましたらお呼びください」



お辞儀をした富貴子さんが下がっていくと、
佐野さんはさっそく書類を広げて
財産についてあれこれ説明してくれた。

難しいことはよく分からなかったけれど、
私が相続したのはこの登坂邸だけではなく
会社の運営には関係のない株式や
不動産などがあって、
使用人の方々の給料は
そこから得られる収入を充てるらしい。

登坂邸の維持費もそこから出すので
何の心配もないと説明してもらえて、安心した。



「それではこちらに署名をお願いします」



指示された場所に『登坂A』と
名前を書くと、
佐野さんは書類を集めて鞄にしまった。



「相続に関するお話は以上です。
手続きが滞りなく終わりましたら
またご連絡させていただきます」

「ありがとうございます。
よろしくお願い致します」

「何かご不安なことがありましたら、
いつでも構いませんので連絡してくださいね。
先ほど岩田家で『未成年後見人というのは
法律行為の代理人に過ぎない』と申しましたが、
亡くなった登坂から
『自分の代わりにAさんを助けてやってくれ』と
頼まれておりますので」



優しく微笑む佐野さんの言葉に、涙ぐんでしまう。

口を開くと泣いてしまいそうで、
頭を下げることしかできなかった。

お祖父様とお別れをしなければならなかった
悲しみは未だ深くて、
お話を聞いただけで
簡単に泣きそうになってしまう。

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