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隆二さんと山下さんが
広臣さんの自家用車に
荷物を載せてくれたので、
護衛の人と共に部屋を出た。

玄関に赴くと
そこには靴を履いた広臣さんと佐野さんがいて、
上がり框の前に母親が立っている姿が目に入る。

睨みつけられて反射的に体を竦ませると、
広臣さんが「A、おいで」と
優しく声をかけてくれた。



護衛の人に挟まれたまま、
ぎこちなく歩いて上がり框に立つ。

靴を履いて広臣さんの傍らに行くと
母親はニンマリ笑った。



「家を出ても、結婚しても、
お母さんはずっとあなたのお母さんですよ。
この家も、ずっとあなたの家です。
『岩田の娘』として恥ずかしくない行いをなさい。
いいわね?」



母親が発した言葉は
まるで呪いのように聞こえた。

例え名字が『登坂』に変わっても
母親にとって私は『岩田の娘』であり、
生贄として岩田家に
金銭を差し出すべき存在でしかない。

私がお祖父様と養子縁組した時、
あんな大金をもらったのに
強欲な母親は
それだけでは満足できなかったのだろう。

兄の言っていた通り
家を出てもしぶとく迫られることを想像して、
ぞっとする。

広臣さんや佐野さんに
どれだけ迷惑をかけることになるかと思って
震えていると、
ふいに背中を優しくさすられた。



「……挨拶しとけ。
今日でこの家とはお別れなんだから」



低くて穏やかな声が耳元で聞こえて顔を上げると、
広臣さんは暖かな眼差しで私を見つめていた。

安心させようとしてくれていることが分かって、
頷いて母親に顔を向ける。



「お世話になりました」



母親にとって私は
政略結婚の道具に過ぎなかったかもしれないけど、
ここまで育ててもらったことは事実だ。

深々と頭を下げて、姿勢を正す。

今までは母親の言いなりに生きてきたけれど
これからは違う。

お祖父様の愛した登坂邸を、
母親には絶対渡さない。

そう決意を込めて踵を返し、
二度と跨がないであろう敷居を越えた。

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設定タグ:三代目JSoulBrothers , 登坂広臣 , 岩田剛典   
作品ジャンル:恋愛
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月葉(プロフ) - いきなり失礼します!更新はもうなさらないのでしょうか?続き楽しみにしてました… (2020年5月17日 15時) (レス) id: 1f27303c9f (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - なおさん» コメントありがとうございます!臣くんピッタリと感じていただけてご本人様に畏れ多いですがとってもうれしいです♪できるだけお待たせしないよう更新がんばろうと思いますので、これからもどきどきして楽しんでいただけるとありがたいです! (2019年12月27日 22時) (レス) id: ffc639491f (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - ゆかさん» 更新遅れがちですみません(>_<)どきどきしていただけてうれしいです!最後まで楽しんでいただけるようがんばりますのでこれからもよろしくお願いします♪ (2019年12月27日 22時) (レス) id: ffc639491f (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - aggyさん» 広臣さんがめずらしく天然な感じで、私もその部分はお気に入りです♪なかなか終わりまでが遠いのですが、そこまで楽しんでいただけるようがんばります! (2019年12月27日 21時) (レス) id: ffc639491f (このIDを非表示/違反報告)
なお - おもしろすぎて二回読みました!ほんとにドキドキします!私が想像している臣くんにぴったりでとても良いです!!とにかくこの作品がだいだいだいだいだいだいだいだいだいだいだいだいだいだいだーーーーいすきです!!!次回もものすごく楽しみです! (2019年12月23日 14時) (レス) id: 8021a8f0f2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なつめ | 作成日時:2019年11月27日 18時

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