この花を君に 6

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それから広臣さんは
遺族としてすべきことを、
淡々とこなしていた。

喪主は広臣さんのお父様のはずなのに
それは名ばかりという感じで、
実際の手続きや手配などは
すべて広臣さんが行っていた。

お通夜の時も、告別式の時も、
広臣さんは泣いていなかった。

忙しく立ち回ってはふらりと姿を消し、
少し煙くて甘いバニラのにおいをさせて
戻ってくる。

そんなにたくさん煙草を吸って
大丈夫なのだろうかと思うと気が気じゃなくて、
だけどひとりになりたいのかもしれない、と思うと
探しに行くことはできなかった。









火葬の間、登坂家の見知らぬ親族の人々や
両親たちと共に待合室にいるのが気詰まりで、
エントランスホールにつながる回廊に立っていた。

この斎場は緑豊かなことがウリらしく、
回廊の窓からは眩しい日差しに光る木々が見える。

ここにお祖父様がいらっしゃれば
何の木なのか教えていただけただろうか。

お祖父様とお花の話をしたくても
もう二度とできないのだと実感してしまって、
喉の奥が痛くなる。



「……知ってたら、婚約なんてさせなかった」



ふいに声が聞こえて後ろを振り向くと、
眉を下げた兄が立っていた。



「臣さんが隠してたのは
じーさんのことだったんだな。
お前、知ってたの？」

「……1ヶ月前くらいに、知った」

「なんで何も言わないんだよ……
言ってくれれば、」

「会社に影響があるかもしれないからって
内緒にしないといけなかったの。ごめんね」



小さな声で謝ると、
兄は私の頭をそっと撫でた。



「悲しい思いをさせるつもりで
臣さんの話を受けた訳じゃなかった。
俺こそごめん」



兄の優しい声に
また涙が出そうになる。

目が痛くて開かなくなるくらい、
たくさん泣いたのに。



「……臣さん、また煙草かな」

「たぶん……」

「側に行かなくていいの？」

「ひとりになりたいのかなって……」

「親とはいたくないかもしんないけど
お前は別でしょ。
行ってこいよ。
裏手に煙草吸えるとこあるらしいから」

「でも……」



躊躇していると、
兄に背中をポンポンと叩かれた。

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