＊白い菊＊ ページ20
お祖父様が
息を引き取ったのは、
9月に入ってすぐのことだった。
残暑は厳しく、セミの鳴き声がうるさい。
広臣さんが用意してくださっていた喪服は
夏用のワンピースで生地は薄手だけど、
黒なので強い日差しが当たると暑い。
タクシーから降りて葬儀場に入る前、
おでこに手をかざして
日光を避けながら歩いていると
先に進んでいた母親が振り返って
「早く歩きなさい」と鋭い声を出した。
お祖父様の希望で
密葬を済ませてから後日社葬を行うというので、
今日は親族だけでお別れをした。
白い菊に囲まれた棺の中には
お祖父様がいらっしゃるのに、
もう二度と会えない。
遺影の中のお祖父様は厳格そうなお顔をしていて、
知らない人みたいだ。
この遺影は社葬でも使うそうなので
きっとお仕事中のお姿なのだろう。
私にはいつも優しかったお祖父様。
穏やかな顔をしている時に
写真を撮らせてもらっておけば
よかったと思っても、もう遅い。
目覚めることのない昏睡に陥る前、
私と話したのがお祖父様の最期の言葉になった。
弱々しく掠れた声で
『広臣と、あの庭を、頼みます』と言われた時、
私の頭の中にあったのは
お祖父様を安心させてあげなければ、
という思いだけだった。
大きな声で『お任せください』と力強く言い、
痩せてしまった大きな手を握る。
握り返されることはなかったけれど、
ゆっくり頷いたお祖父様に
きっと私の気持ちは伝わったと思う。
最期の時は、広臣さんのご両親もいた。
おふたりは病室にいる私を
怪訝そうに見ていたけど、
何も言わずただそこにいるだけだった。
耳障りなモニター音の中、
富貴子さんは耐えかねたように
すすり泣いていたけれど、
広臣さんは泣かなかった。
悲しく辛い現実を噛みしめるように、
険しい顔をしていた。
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月葉(プロフ) - いきなり失礼します！更新はもうなさらないのでしょうか？続き楽しみにしてました… (2020年5月17日 15時) (
レス) id: 1f27303c9f (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - なおさん» コメントありがとうございます！臣くんピッタリと感じていただけてご本人様に畏れ多いですがとってもうれしいです♪できるだけお待たせしないよう更新がんばろうと思いますので、これからもどきどきして楽しんでいただけるとありがたいです！ (2019年12月27日 22時) (レス) id: ffc639491f (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - ゆかさん» 更新遅れがちですみません(>_<)どきどきしていただけてうれしいです！最後まで楽しんでいただけるようがんばりますのでこれからもよろしくお願いします♪ (2019年12月27日 22時) (レス) id: ffc639491f (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - aggyさん» 広臣さんがめずらしく天然な感じで、私もその部分はお気に入りです♪なかなか終わりまでが遠いのですが、そこまで楽しんでいただけるようがんばります！ (2019年12月27日 21時) (レス) id: ffc639491f (このIDを非表示/違反報告)
なお - おもしろすぎて二回読みました！ほんとにドキドキします！私が想像している臣くんにぴったりでとても良いです！！とにかくこの作品がだいだいだいだいだいだいだいだいだいだいだいだいだいだいだーーーーいすきです！！！次回もものすごく楽しみです！ (2019年12月23日 14時) (レス) id: 8021a8f0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつめ
| 作成日時：2019年11月27日 18時
