この花を君に 6

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富貴子さんが
洗濯をしに行っている間に、
広臣さんが病室に訪れた。

「じーちゃん、調子どう？」と
大きな声で尋ねながら、
椅子を持ってきて私の隣に座る。



「顔色いいじゃん。調子よさそうだな」

「今日はぶどうゼリーを作ってきたのですが
召し上がってくださいました」

「そっか。よかったな、じーちゃん」



広臣さんがそう声をかけると、
お祖父様は不機嫌そうに眉をしかめて目を閉じた。

どうなさったのだろうと思っていると、
「……子供は生まれたのか」と
弱々しい声で尋ねられる。



「は？誰の？」

「……お前のだ」

「いや、まだ結婚してないから。
見てよ、こいつの腹ぺっちゃんこだろ」



そう言った広臣さんが私のおなかを指し示すと、
お祖父様は呆れたような表情を浮かべた。



「そうじゃない……外の女を孕ませただろう」

「あー！そのこと？忘れてたわ。
つかそれは俺の子じゃねーって」

「往生際が悪い……」

「いや、ほんとに。これはマジで自信ある。
生まれてからDNA鑑定したら一発で分かるしさ、
信じてよ」



広臣さんがそう言っても
お祖父様は不機嫌そうな表情を崩さない。

やはり信じてはくださらないのだろうか、と
ふたりを見ながら不安に思っていると、
私に視線を向けたお祖父様が頭を下げた。



「本当に申し訳ない……
この期に及んでこんなことを、」

「いえ、本当に、先日も言いましたが
私は広臣さんを信じているので大丈夫なんです」



そう答えると、お祖父様は眉を下げた。



「もっと、怒るべきだ」

「そうでしょうか……」

「図に乗らせては、いけない」



お祖父様は何を求めていらっしゃるのだろう。

私が今ここで広臣さんに怒ってみせれば
満足してくださるのだろうか。

ちらりと横を見ると広臣さんと目が合って、
肩を竦められる。



「……広臣」

「なに？」

「近頃のお前の態度は、目に余る……
このような素晴らしいお嬢さんが、
わざわざお前なんかと
婚約してくださったというのに、
感謝が足りん」



息切れして途切れがちになりながらも
お祖父様はそう言い、
広臣さんは気まずげに目を伏せた。

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