この花を君に 6

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「子供が生まれる前に
結婚しろって
言ってるらしいじゃん。
子供の父親が誰か
自信持って言えるなら
生まれてからDNA鑑定すりゃいいのに」



そういったデリケートな話を
護衛の人たちがいる前で
してしまっていいのだろうか。

気まずくて横を見られず、
おどおどしていると
隆二さんの笑い声が聞こえてくる。



「特定の人物の名前は出してないから大丈夫。
これは世間話」

「世間話に聞こえません……」

「はは、まあいいじゃん。
でさ、一般論なんだけどこういうトラブルの時、
女って相手の男を憎む訳じゃないんだよね。
例えば相手の男に婚約者がいたら、
そっちを恨むの」

「えっ、どうしてですか」

「どうしてだろうねぇ。
好きな男に嫌われたくないから責められなくて、
矛先を別の女に向けるのかもしれないし。
金ヅルの機嫌を損ねたら
お金もらえないかも、って
考えてるのかもしんないし。
男の俺には理解できないけど」



子供な上に今まで恋愛をしたことがない私にも
理解できない話に、戸惑ってしまう。

私は嘘をついて
無理やり広臣さんと結婚したいとは
思わないけれど、
一般的な大人の女性は
みんな思うものなのだろうか。



「お姫様は純粋だからなぁ。
そういうドロドロした感情は
一生分かんないかもしんないけど、
でもそういうもんなんだって
覚えといた方がいいよ。
例えば臣と結婚したがってる女がいたとして、
その女の矛先は
臣じゃなくてお姫様に行く訳だから」



そう言われて、
警備員さんや護衛の人をつけて
ここまで物々しく警戒しているのは
アマリアさんから私を守るためだったのだと
やっと分かった。

アマリアさんが広臣さんと結婚できなくて
それを恨みに思ったとしたら、
私を憎んで攻撃してくるかもしれないと
広臣さんは怖れているのだろう。

今はあんなに素っ気なくなってしまったのに、
それでもまだ
私を守ろうとしてくれているらしいことに、
泣きそうになってしまう。

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