この花を君に 5

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「いや、いい。
まだ仕事残ってるし」

「えっ……
体調が悪いのに、ですか？」

「ほんとに寝不足なだけだから大したことないよ。
心配かけてごめんな」



そう言った広臣さんが立ち上がろうとしたけど、
ふらついたように畳に手をつく。

こんな広臣さんは見たことがなくて
慌てて側に駆け寄った。

思わず「全然大丈夫じゃないじゃないですか！」と
叫ぶと、
苦笑した広臣さんが屈んでいる私を見上げてくる。



「こんなに俺に近づいていいの？
またキスされるかもしんないのに」

「……そんな冗談言ってる場合じゃないですよ。
ちょっとだけでも休んでください」



体調が悪いのに
相変わらずふざけている広臣さんの肩を押して、
無理やり横たえる。

驚いた顔をしている広臣さんの頭の下に
座布団を二つ折りにして入れると、
戸惑ったような目に見つめられた。



「隆二さんが迎えに来てくれるんですよね？
時間になったら起こしますから」



そう声をかけると、
少し迷っていた様子だったけど
結局広臣さんは大人しく目を閉じた。

目の下にはクマができていて、
やっぱり頰がこけているように見える。

ただ疲れているというのとは違う、
どこか痛々しいその顔を見つめていると
悲しいような切ないような気持ちになって、
つい手を伸ばしてしまった。





目にかかる前髪をそっと掻き分けて、
耳の上に流す。

おでこを触ってみると少し熱くて、
これは広臣さんの体温が高いのか
熱があるのか判別できなくて
ますます心配になる。

たとえ発熱していても、
広臣さんはこの後仕事に戻るのだろうか。

こんなに辛そうなのに
どうしてここまで仕事を
がんばらなければならないのだろう。

私は働いたこともなければ
社長になったこともないので分からないけど、
仕事というものがこんなに大変なら
以前隆二さんが言っていたように
広臣さんには癒してくれる人が必要だと思う。

何があっても、
絶対に広臣さんの味方でい続けてくれる人が。

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