この花を君に 5

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「いいよ、庇ってくんなくて。
岩ちゃんの言う通りだから」

「広臣さん……」

「今回のことは、本当に申し訳ない。
出版社を名誉毀損で訴えて
訂正記事書かせるから。
それでももし将来こいつが結婚したいと思った時に
今回のことが障害になるようなら、
俺が責任を取る」

「どうやって？」



鼻で嗤った兄に、広臣さんは言いづらそうに
「責任取って、結婚する」と答えた。



「はぁ？婚外子作るような人に
大事な妹をあげられる訳ないでしょ」

「俺の子じゃねーって。
そもそもあん時泥酔してたから
たぶんやってない」

「いまさら何言ってんですか。
そんな言い訳通用すると思ってます？」

「思ってないから言わなかった。
あの女とホテル行ったのは事実だし。
でももし結婚するならあんなこと二度としない。
ちゃんと大事にする」



本人である私をそっちのけで
続けられる話の流れに、唖然とする。

なぜ週刊誌の話から
結婚するしないの話になったのだろう。

広臣さんが私のことを
好きだと言ってくれたならともかく、
責任を取って結婚すると言われても
全くうれしくない。

結婚したくないのに無理にされても
みじめなだけだ。



「……勝手なこと言わないでください」



腹立たしい気持ちを抑えてそう言うと、
広臣さんと兄がこちらに顔を向けた。



「こんなことで結婚なんかしません。
責任なんて取っていただかなくて結構です。
お兄ちゃんも、広臣さんが嘘ついた訳じゃないのに
八つ当たりするのやめなよ」



これ以上ふたりが勝手に言い争うのに
付き合っていられなくて、応接間を出る。

自分の部屋に戻ってベッドに横たわり、
顔を隠すように布団をかぶった。

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