この花を君に 5

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『好きな男ならいいけど
そうじゃない男の家に行くなんて
言っちゃダメだからな。
誘われても断れよ。
キスよりもっとすごいことなんか
されたくないだろ？』

「……はい」

『ん。つかさぁ、
いい加減進路決めてくんないと困るんだけど。
結局どうすんの？』

「あっ……」



そう尋ねられて、冷や汗をかく。

広臣さんに婚約期間が短くなるかもしれないし
延びるかもしれないと言われていたのに、
広臣さんと一緒にいられる時間が
終わることを考えたくなくて、
婚約破棄した後のことも棚上げにしたままだった。

それを指摘されたのが気まずくて黙り込むと、
『ちゃんと考えろよ』と
呆れたような声音で言われてしまう。



『いくら俺らがお前のこと助けたいと思っても、
お前自身ががんばんなきゃ
自立なんかできないんだから。
このままずっと母親のお人形さん続けたいんなら
もう何も言わないけど』

「……すみません」

『一応フラワーアレンジメント関係の仕事は
2、3件ツテ探したから紹介できるけど。
まだやりたいことが決まんないなら
附属の大学に内部進学してもいいし。
学費は出すって言っただろ？
とりあえず就職すんのか
進学すんのかだけでも決めて。今すぐ』

「え、今すぐ、ですか？」

『だってこのまま考えとけって言って電話切っても
お前絶対考えないじゃん』



容赦ない言葉を浴びせられて、泣きそうになる。

確かにその通りなのだけど、
広臣さんは婚約破棄して私と縁が切れることを
何とも思わないのだろうか。

もしかしたら、手がかかる子供とサヨナラできて
せいせいするとでも思われているのかもしれない。

今こうしてスマートフォンを用意して
電話をしてくれたのも、
カフェに連れて行ってくれたり
ご実家のお庭を見せてくれるのも
義務感から仕方なくしているだけで、
広臣さんは楽しくないのかもしれない。

そう思うと悲しくて、
でも泣いたらまた心配をかけると思って
ぐっと歯を食いしばって我慢していると
『どっちにすんの』と追い打ちをかけられる。

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