この花を君に 5

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「じゃあ中にも
お風呂があるんですか？」

「うん」



広臣さんは平然としているけど、
マンションに露天風呂があるなんて
絶対普通じゃない。

リビングも広かったし、2階もあるし、
うっかり「掃除大変そう」と呟くと
可笑しそうに笑われる。



「大変だろうな。
ここはコンシェルジュが全部やってくれるけど」

「え、でも前、おうちに人を入れるのは
嫌だっておっしゃってませんでしたか？」

「俺がいない時にクリーニングが入るのは
別にいいよ。
寝てる時とか、夜帰ってきてから他人がいんのは
落ち着かないから嫌だけど」



そう言いながら、
広臣さんは水に浸かっていた花束を取り出した。



「これ、どうしたらいい？」

「えと……剪定ばさみはありますか？
なければ普通のはさみでも」

「ないな。普通のはさみはある」

「じゃあそれで水切りするので……
花瓶と、ごみ袋をお願いします」



水に濡れた花束を受け取ってリボンを解き、
包装のフィルムや不織布を取る。

それを広げた上に花束本体を置き、
切り口につけられていたオアシスを外していると
広臣さんがはさみと花瓶とごみ袋を
持ってきてくれた。

バラバラになったトルコキキョウと
かすみ草とグリーンをそれぞれ分けていると、
後ろに立った広臣さんが
「それ何の花？」と尋ねてくる。



「トルコキキョウとかすみ草ですよ」

「あー、これがトルコキキョウなんだ。
綺麗だな」



紫と白のコントラストが美しい
トルコキキョウの余分な葉をちぎり、
露天風呂の水に浸けて水切りをする。

おそらく1日中外気に晒されていたのだと思うけど、
その割に花びらは傷んでいない。

枝分かれした部分を切り離して長さを揃え、
グリーンとかすみ草と一緒に
バランスよく生けると、とても綺麗になった。

花瓶ごと手渡すと、満足げに笑った広臣さんが
「ありがと」とお礼を言ってくれる。

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