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「体調がよくなったら
またデートしような」
「……はい」
「約束してたハンバーグ屋、今度行こ」
「はい。楽しみにしてます」
そう答えると
優しく微笑んだ広臣さんが踵を返して、
帰ってしまうのだと思うと淋しくなる。
ついて行きたくなる気持ちを我慢して
兄の手を握ったままでいると、
「あ、そうだ」と何かを思い出したように
広臣さんが振り返った。
「今日はAさんのスマートフォンを
用意してきたんです」
そう言って、広臣さんは鞄から
花柄のカバーがついた
スマートフォンを取り出した。
まるで青いあじさいが
閉じ込められているかのような
美しい見た目のスマートフォンを差し出されて
受け取ると、母親が慌てたように
「まあ、こんな高価なものいただけませんわ」と
取り上げようとしてくる。
思わず胸元に抱えて取られないように
ぎゅっと握りしめると、
広臣さんは母親に向かってニッコリ笑ってみせた。
「お気遣いなく。
Aさんの声を毎日聞きたいという
私のわがままで用意したものなので」
「ですが、毎月費用が発生するものでしょう？
そんなものをいただくなんて申し訳なくて……」
「構いません。
書類上とはいえAさんはもう
登坂の人間になるのですから、
これくらい当然です。
仕事が不規則なもので
いつ連絡できるかは分かりませんが、
なるべく夜遅くならないようにしますので
肌身離さず持たせていただくようお願いします」
そう言って、広臣さんは安心させるように
私に向かって頷いてみせた。
こくこくと頷き返すと満足げに笑って、
「また後で電話するわ」と言ってくれる。
「はは、身内の前で恥ずかしげもなく
いちゃつきおって。
すみませんなうちの孫が。
娘さんに夢中なのですよ」
「それは……有難いことですわ」
全くそう思っていないような声で母親がそう答え、
思わずスマートフォンと兄の手を
強く握りしめてしまう。
せっかく広臣さんがくれたものなのに、
これがあれば
広臣さんといつでも連絡が取れるのに、
取り上げられるかもしれないと思うと怖くなる。
内心恐れおののいていると、
弁護士の佐野さんが挨拶をして
玄関のドアを開けた。
その後にお祖父様と広臣さんが続き、
みんな帰っていってしまう。
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なつめ(プロフ) - omikoさん» こちらこそ読んでくださりありがとうございます♪また更新がんばります！ (2019年10月17日 18時) (
レス) id: 273ec9fd08 (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - 譲さん» ややこしいミスしてしまってすみません！そうなんです、腹黒なのは事実ですが実はいいお兄ちゃんだったんです笑 母親はひどいですよね(>_<)でもその分岩ちゃんが愛情を注いでくれました(^^) (2019年10月17日 18時) (レス) id: 273ec9fd08 (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - mikkyさん» コメントありがとうございます♪せっかくの溺愛ぶりを飛ばしていてすみません……！ちゃんと載せることができてよかったです(>_<) (2019年10月17日 18時) (レス) id: 273ec9fd08 (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - ユキさん» 想像するとたまりませんね(^^) (2019年10月17日 18時) (レス) id: 273ec9fd08 (このIDを非表示/違反報告)
omiko(プロフ) - 更新うれしいです(^^)ありがとうございます！ (2019年10月13日 16時) (レス) id: f68873c807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつめ
| 作成日時：2019年9月13日 23時
