この花を君に 3

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「直人さんも
健二郎さんから聞いたでしょ？
この人のメロメロぶり。
直己さんにすら嫉妬してんですから
うちの妹をモデルに使うなんて
絶対無理ですよ」

「お前、今日は俺の助手だろ。
俺の味方しろよ！」

「そうしたいのはやまやまなんですけど、
箱入りのお姫様に
モデルなんて務まらないと思うんで。
他当たってください」



兄がそう言うと
広臣さんは安心したような息を吐いた。

ちらりと上を向くと、
私の視線に気づいた広臣さんが
目を合わせて微笑んでくれる。



「大丈夫。絶対守るから。
後でお前が困ることにはならないようにする」



それはきっと、
さっき広臣さんが言っていたように
私が今後結婚したい相手ができたとして、
その人にこのウェディングフォトを
見られないようにしてくれると
いうことなのだろう。

そんな日が来るとは思えなかったけど、
広臣さんの優しさを無駄にしたくなくて、頷いた。









広臣さんの拒絶と兄のアシストに
渋々引いた直人さんがガゼボを離れて、
荒井さんたちもみんなホテルの方へ戻っていった。

私を抱っこしたまま立ち上がった広臣さんが
歩き出そうとした瞬間
スズランのブーケを落としそうになってしまって、
慌てて持ち直す。



「大丈夫？」

「はい……
あ、このブーケ、撮影終わったら
いただいてもいいんでしょうか」

「ああ、いいよ。全部持って帰って」

「いえ、その……
広臣さんがスズランお好きなら、
持って帰ったりしないかなって」



そう言うと、
広臣さんは「俺？」ときょとんとした顔をした。



「はい、あの……
実は、この間の打ち合わせの時、
ブーケの花材にスズランを用意してもらえるように
お願いしてたんです。
広臣さんがお好きかと思って」

「……マジか」

「だから、これは広臣さんに」



ブーケを差し出すと、
広臣さんは困ったように眉を下げて笑った。

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