この花を君に 3

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これは、
以前ここで抱っこされたのと
全く同じ体勢だ。

あの時のことを思い出して
恥ずかしさに身を固くしていると、
カメラを持った直人さんが
こちらに近づいてきているのが見えた。

どんな顔をすればいいのか分からなくて
内心あわあわしていると
耳の上に柔らかな感触がして、
ちゅーされてしまったことに
ますますどきどきする。



「ん、もう、や、」

「あーあ、もうちょっとがんばったら
マカロンが待ってるのになぁ」

「うう……」



そう言われると、
マカロンを楽しみにしていた私としては
抵抗できなくなってしまう。

仕方なく顔を上げると、
可笑しそうに笑っている広臣さんと目が合った。



「ほんと甘いもん好きだなー。
甘ければ何でもいいの？」

「そういう訳では……
実は最中は苦手です」

「あ、そうなの？和菓子はあんまり？」

「いえ、好きです。
最中はあごの裏に張りつくじゃないですか。
それが嫌で」

「あー、確かに。
俺ね、甘いもんはあんまりだけど外郎は割と好き」

「え、ほんとですか？私も好きです！
外郎、おいしいですよね」



広臣さんは甘いものは
何でも苦手だと思っていたのに、
外郎なら一緒に食べられるのだと思うと
うれしくなる。

お気に入りのお店の外郎をオススメしたくて
「今度持ってきます」と言うと、
優しく微笑んで頷いてくれた。



「そこのお店の外郎は、葛粉を使ってるんです。
なのでつるんとしておいしくて、」



そう説明している私のおでこに
広臣さんがちゅーをする。

あまりにも自然な流れだったので、
一瞬反応が遅れてしまった。

その隙にぎゅっと抱きしめられて、
耳元にふっと息をかけられたのが
くすぐったくて笑ってしまう。



「や、それ、ダメです」

「えー？耳、くすぐったいの？」

「あ、ほんとに、やだ、」



くすぐったい状態で囁かれると
ますますくすぐったくなって、逃げたくなる。

一生懸命もがくと広臣さんが腕の力を緩めて
私の顔にほっぺたを寄せてきた。

「ちゅーして」とねだられて、
恥ずかしかったけど
言われた通りにくちびるをつける。

するとまるで褒められているかのように
顔の横を撫でられて、うれしくなった。

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