この花を君に 3

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ホテルの外へ出て庭を進むと
ガゼボの側に
兄と直人さんと
荒井さんが立っているのが見えた。

抱っこされている私を見た兄は
やたらニヤニヤしていて、内心げんなりする。

ガゼボの中に入ると
広臣さんがベンチの上に私を座らせて、
スタッフさんからハイヒールを受け取った。

私の前に屈み込み、
裾から足を出してハイヒールを履かせてくれる。

その麗しい見た目も、
私の足を支える柔らかな手も、
優しく微笑むその表情も
何もかも王子様みたいで、どきどきした。

ドレスの裾を直して広臣さんが立ち上がると
後ろからついて来ていたエリーさんが
髪を軽く直してくれる。

それからスズランのブーケを手渡してくれた
荒井さんが、私の耳元に顔を寄せてきた。

小声で「チャンスですよ」と言われて
何のことかと首を傾げると、
ブーケを指し示される。



「社長のために選んだお花だって教えてあげたら
絶対喜びますから。
私たちは向こうに控えてますから
存分にいちゃいちゃなさってください」



その言葉にぎょっとすると、
ニッコリ笑った荒井さんにサムズアップされる。

『いちゃいちゃ』という言葉は
私には刺激が強すぎるけど、
『ラブラブで幸せ』な写真のためには
がんばらなければならない。

悲壮な覚悟を胸に秘めながら頷くと、
荒井さんは笑顔で頷き返して後ろへ下がった。



「最初は引きで撮るから
楽しそうに話しててくれる？
適当なとこでカメラ持ち替えるけど
気にしないでリラックスしててね、お姫様」



直人さんにそう言われて頷くと、
みんなガゼボから離れていった。

遠くに備え付けられたカメラを
直人さんが覗き込むのを見た広臣さんが
手を引いて私を立ち上がらせる。



「今日、晴れててよかったな。
バラも綺麗に咲いてるし。ほら」



そう言われて周りを見渡すと
パステルカラーのバラに囲まれているのが
目に入った。

今を盛りとばかりに咲き誇る
色とりどりのバラに見とれていると、
優しく背中を撫でられる。

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