この花を君に 3

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ドレス担当のスタッフさんが
ハイヒールを持ってくれたので、
広臣さんは私を抱えたまま
部屋の外へ出た。

ただでさえ見目麗しい広臣さんが
クラシカルな白いフロックコートを着ているので、
通りすがりの女性たちは
みんなうっとり見とれている。

広い胸に顔をくっつけたまま
広臣さんの顔をこっそり仰ぎ見ると、
女性たちの視線を特に気にしている様子はなくて
きっとこんなことには
慣れっこなのだろうと思った。

すると、ふとこちらを見下ろした広臣さんが
ふっと笑っておでこにちゅーをしてきて
飛び上がりそうなほど驚いてしまう。



「な、な、や、なにを、」

「いや、今だったら
ちゅーしても逃げられないなと思って」

「なっ……！
や、やめてください、ほんとに、あの、
写真撮影の時はがんばりますから今は、」



『ラブラブで幸せ』な写真を撮るために
ちゅーされるのは、
もう仕方のないことだと諦めている。

だけど写真を撮るわけではないのに
ちゅーされるのは
意味が分からないし、恥ずかしい。

そう思って必死で訴えると、
くくっと笑った広臣さんが「分かった」と答えた。



「じゃあがんばってもらおうかな。後で」



その言葉に含みがあるように聞こえて
不安になったけど、
がんばらなければならないことは
事実なので頷いた。

ニヤッと笑った広臣さんが視線を外し、
まっすぐ前を見る。

私を抱える腕は力強く、
こんなに長い距離を歩いているのに
広臣さんは疲れた様子もない。

広臣さんの抱っこは安定感があって
落ちる心配はなかったけど、
至近距離でくっついているのは
やっぱりどきどきした。

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