この花を君に 3

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「花のことになると
急にペラペラしゃべり出すからさ、」

「……すみません」

「いや、いいよ。じゃ花のこと教えてよ」

「はい、何でも聞いてください！
広臣さんはどんなお花がお好きですか？」

「あんま派手なのは好きじゃない。
バラは嫌いじゃないけど、
いっぱい花びらがあるやつはあんまりかな」

「バラでも一重咲きのものがありますよ。
そういえば、
白いコブシがお好きだっておっしゃってましたね。
白いマーガレットはいかがですか？
あとは、スズランなんかも
可憐で可愛らしくていいですね」



今の時期に咲く白い花を思い浮かべて
挙げていくと、
スーツのポケットから
スマートフォンを取り出して操作した広臣さんが
「これ？」と画面を見せてくる。

周囲がライトアップされているとはいえ
暗がりでよく見えなくて、
画面を覗き込もうとすると
ティーセットの乗ったトレーを脇に避けて
体を近づけてくれた。

広臣さんの手元に顔を寄せ、
画面に映る白いマーガレットを確認する。

「これです！可愛いですよね」と言いながら
広臣さんを仰ぎ見ると
端正な顔が思ったより近くにあって、
びっくりした。

目を見開いて固まっていると
ふっと笑った広臣さんがするりと私の頭を撫でて、
髪をひと束手に取る。



「……花のこと教えてもらう代わりに、
俺も別のこと教えてやろっか？」



そう言って、広臣さんは私の髪にキスをした。

心臓が飛び出るんじゃないかというくらい驚いて、
顔がぼっと熱くなる。



「健ちゃんに性教育しろって言われたしな。
この先出会いがあっても
箱入りのまんまじゃ悪い男に
騙されるかもしんないし。
だから、教えてやる」

「な、な、なにを……」



パニックになっている私を見据えて、
広臣さんはニヤッと笑った。

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