この花を君に 3

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お願いしていた
スズランもたくさんあって、
荒井さんにお礼を言おうとすると
ちらりと広臣さんを見て
『しーっ』というジェスチャーをされる。

なぜかは分からないけど、
きっとスズランのことは
広臣さんには内緒なのだろうと思って頷いた。





まずウェディングドレスに合うブーケを作ろうと、
白いバラを手に取る。

いろんな花材を取り合わせることも考えたけど、
Aラインのドレスを引き立たせるために
あえてお花はバラだけにした。

周りを大ぶりな葉で囲い、テープでまとめる。

お花担当のスタッフさんが
リボンをかけてくれるというのでお任せして、
次はスズランのブーケを作ることにした。

たくさんのスズランをひとつにまとめると
エンパイアラインのドレスに合う
可憐なブーケになる。

花を傷めないように
慎重にテープで茎を固定していると、
後ろから作業を見ていたらしい広臣さんが
「やっぱ手際いいな」と呟いた。



「その花、なに？」

「スズランです。可愛いですよね」

「あー、これが前言ってたやつかぁ。
確かに可愛い。俺これ好き」



その言葉に内心ほっと胸を撫で下ろしていると、
荒井さんに満面の笑みでサムズアップされた。

はにかみながらそっと頭を下げ、
今度はカラードレスに合うブーケを作っていく。

ピンクのドレスには
濃淡をつけたピンクのバラの束に
かすみ草を差したもの。

うす紫のドレスには
トルコキキョウとブルースターを合わせたもの。

クリーム色のドレスには
黄色のカラーをたくさん束ねたもの。

3つ作り終えて
スタッフさんにリボンをかけてもらっていると、
広臣さんに「お疲れ」と頭を撫でられた。



「さすがだなー。
若先生の弟子だけあってセンスいいわ」

「……ありがとうございます」

「荒井、こいつどう？」

「うちに来てくだされば即戦力ですね。
めちゃくちゃ助かります」

「だってさ。
気が向いたらいつでもうちで働いてくれていいよ」



頭を撫でながら褒められて、
恥ずかしいやらうれしいやらで
顔が熱くなってしまう。

俯いて照れていると、優しく微笑んだ広臣さんに
「着替えに行こ」と手を引かれた。

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