この花を君に 3

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ラウンジに
連絡を入れてくれた
荒井さんにお礼を言い、
着替え終えた広臣さんと一緒に
サロンを出た。

手をつないで歩いていると、
「楽しかったな」と広臣さんが呟く。



「お前にドレス着せるの、
お人形さんごっこしてるみたいだった」

「……」

「ちょ、引くなよ。
そういう趣味があるとかじゃないから。
これ着てって言ったら、
お前は素直に着てくれんじゃん。
それが楽しかったの」



素直に着ているというより
広臣さんが強引で
口を挟む余地がなかっただけなのだけど、
楽しかったならまあいいか、と思い直す。

ドレスの試着はかなり疲れたけど
今から甘いものを食べさせてもらえるのは
楽しみだ。

ワクワクしながらエレベーターに乗った私は
完全に油断しきっていて、
つないでいた手を引かれて
広臣さんの腕に閉じ込められた時、
一瞬何が起こったのか分からず
反応が遅れてしまった。



制服越しに
背中に広臣さんの手の熱さを感じる。

ふんわり甘いバニラのにおいを感じて、
ようやく自分が置かれている状況に思い至った。

慌てて広臣さんの腕の中から
抜け出そうとしても遅く、
逆にぎゅっと抱きしめられてしまう。



「……バカだな、俺。
ミイラ取りがミイラになってどうすんだっつーの」

「え……」

「何でもない。
つかさ、もう全然俺のこと
警戒してなかったでしょ。
だからこんなんされるんだよ」

「な、そ、そんなこと言うならやめてください！」



エレベーターの中は誰もいないけど、
今から誰か乗ってくるかもしれないし
もうすぐ目的階についてしまう。

そしたら誰かに見られてしまうかも、と思うと
恥ずかしくて、じたばたもがくと
ようやく解放された。

できるだけ端に寄って距離を取ると、
心なしか目尻を赤くした広臣さんがニコッと笑う。



「エレベーターの中じゃなかったら
ちゅーしたのにな」

「……！」



衝撃の発言に愕然としているうちに
エレベーターが止まり、
手を引かれてラウンジに連れて行かれた。

「いらっしゃいませ」と
ウェイターさんに出迎えられたけど、
会釈を返す余裕もない。

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