この花を君に 3

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「うちは跡継ぎでも
実力主義だから、
入社してからいろんな部署
たらい回しにされたの。
もちろんウェディング部門でも
ひと通り仕事したから
フィッティングの手伝いもしたし。
さすがに試着室の中までは入ってねーけど」

「そうですか……」

「ヤキモチ妬いちゃった？可愛いな」



耳元で甘い声に囁かれて、
叫びたくなるくらい恥ずかしくなる。

「妬いてません！」と
広臣さんの体を押しのけると、
笑いながら腰を抱かれた。



「はいはい。
もう他の女にはこんなことしないから。
それよりちゃんと鏡見て。どう？」

「……これ、好きです」

「そっか。他にも選んだ？」

「同じエンパイアラインのものを
いくつか選んでもらいました」

「荒井、Aラインのドレス持ってきて。
レースのハイネックで、ロングトレーンのやつ」

「かしこまりました」



そう答えて頭を下げた荒井さんが
ドレスを取りに行ってしまう。

「これがいいのに……」と思わず呟くと、
「まあまあ」となだめるように背中を撫でられた。



「俺が見たいの。絶対そっちも似合うから」

「……でも、これがいいです」

「ん、分かった。じゃあ着てみるだけ。な？」



後れ毛をくるりと指に巻きつけた広臣さんが
鏡越しに私を見る。

仕方なくこくんと頷くと、
広臣さんは優しく微笑んで背中に手を滑らせた。





ドレスを手にした荒井さんが戻ってきて、
またスタッフさんと共に試着室に入る。

やたら裾が長い
Aラインのドレスを着せてもらって外へ出ると、
広臣さんは上から下に視線を巡らせて
「やっぱいいな」と呟いた。

私を鏡の前に立たせて、
後ろのリボンの形を整えてくれる。

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