この花を君に 3

3 ページ21

「そういうとこが
臣のツボなんだって。
本人は無自覚だけど」

「そうなんですか……？」

「うん。口では好きなだけ
恋愛させてやりたいとか、
ほんとに好きな男と
結婚させてやりたいとか言ってるけど絶対ウソ。
だって実際俺がお姫様に花あげたら
めっちゃ機嫌悪くなったし、
婚約披露パーティーの時も
直己さんにすげー牽制してたんでしょ？」

「直己さん？」



聞きなれない名前に首を傾げると、
運転席から「華道の先生。
直己さんの名字なんだっけ」と答えが返ってきた。



「小林の若先生のことですか？」

「そうそう、小林だった。
普段呼ばないから忘れる。
健ちゃん言ってたよ、
臣がお姫様と直己さんを
しゃべらせないようにしてて引いたって」



そう言われてあの日のことを思い返してみたけど、
若先生がパーティーに来ることを
教えてくれたのは広臣さんだったし、
ちゃんと挨拶もさせてくれたので
山下さんがなぜそんな風に思ったのか分からず
困惑してしまう。

そもそも、隆二さんまで
若先生のことを知っているなんて驚きだ。

みんな仲よしのお友達なのだろうかと思って
そう尋ねると、
「説明難しいんだけど」と苦笑しながらも
隆二さんは若先生とのつながりについて
教えてくれた。



「昔よく遊んでたクラブがあるんだけど、
みんなそこで知り合ったの。
正確に言うと、直己さんの先輩の
直人さんっていう人がめっちゃ人懐っこくて、
俺と臣が遊んでるとこに
話しかけてきて仲よくなって。
直人さんつながりで
みんな飲みに行ったりするようになった感じ」

「へー、そうなんですね。
クラブって何ですか？」

「ええー……
何て説明すればいいんだろ。
すげーでかい音で音楽かかってて、
踊ったり酒飲んだりするとこ」

「……若先生が、そんなところに？」



いつも着物姿で凛としている若先生が
そんな場所に出入りしているという
イメージがなくて戸惑っていると、
隆二さんは可笑しそうに笑った。

4→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す