この花を君に 3

＊スズラン＊ ページ19

社長に就任した広臣さんは
以前より
忙しくなってしまったらしい。

結局それからデートには一度も行かないまま、
ウェディングフォトの打ち合わせの日を迎えた。

登坂グループのウェディング部門に所属する
プランナーさんが
一切を取り仕切ってくれるとのことなので、
また学校が終わってから
隆二さんのお迎えで
登坂グループのホテルに向かう。



「こないださぁ、ごめんね」

「……え？」

「俺が教えた作戦、効きすぎちゃったんでしょ？
臣がお姫様にキスしてたって
健ちゃんから聞いてさ、
それであの日の帰り
なんか変だったんだー、と思って。
大丈夫だった？」

「ま、待ってください、
どういうことですか、」



広臣さんに無体な振る舞いをされたことを
なぜ山下さんが知っているのだろう。

しかもそれを
どうして隆二さんにまで言ってしまうのか。

恥ずかしすぎて顔を押さえていると、
「健ちゃん見張りしてたって言ってたけど」と
笑みを含んだ声が運転席から聞こえる。



「なんか変な女にちょっかい出されたんでしょ？
臣がお姫様といちゃいちゃしたがってたから、
邪魔されそうになったら止められるように
近くにいたって健ちゃんは言ってた」

「な、なん、そんな、全然違います！
いちゃいちゃなんて、」

「ふーん？
まあ健ちゃんはそういうつもりだったんだって。
で、お姫様が甘えてるとことか
キスしてるとこ見ちゃったーって騒いでたけど」

「ご、誤解です！」



山下さんが言っていたのは
おそらくガゼボで広臣さんに
無体な振る舞いをされた時のことだろう。

私は甘えてなんていないし、
広臣さんにちゅーはされてしまったけど
くちびるはちゃんと守った。

だけど詳しく説明するのは恥ずかしすぎて
それ以上何も言えずにいると、
隆二さんに笑われる。



「別にいいじゃん。
『契約』じゃなくてほんとに結婚しちゃえば？」

「無理です……
私みたいな子供は
広臣さんに相応しくありません」

「大人だったらいいの？
てか臣が結婚したいって言い出したら
お姫様的にはアリなんだ？」



そう尋ねられて
恥ずかしさで脳みそがパンクしそうになった。

思わず座席に倒れこんでうずくまると、
「落ち着いて！」と笑いながら声をかけられる。

2→←9

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す