この花を君に 3

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「家で庭いじりをしていろと
言ったのはお前じゃないか。
そこへAさんを招いて何が悪い」

「花をダシに使われたら勝てる訳ねーじゃん。
あーあ、じーちゃんのせいで
デートの時間減ったわ。
習い事休ませんの気がひけるから
ただでさえあんま誘えないのにさー」

「……あの、大丈夫です。
広臣さん優先なので、習い事は休みます」



広臣さんに誘われると、母親の機嫌がいい。

お花はともかく
他の習い事は母親にやれと言われたから
しているだけだし、
広臣さんと出かけることで休ませてもらえるのは、
本当は有難い。

この間の無体な振る舞いのことを
許した訳ではないけど、
さすがに広臣さんも人前で
あんなことはしないだろう。

なぜデートに誘われるのかは分からないけど、
あのことがなければ
広臣さんとお出かけするのは楽しかったし、
優しくしてもらえるなら
またカフェに連れて行ってほしいな、と
内心思っていると、
広臣さんは目を細めて私を見た。



「言ったな？火曜も誘うぞ？」

「えっ……
火曜はお花の日なのでできれば他の日に……」

「分かってるよ。
ウェディングフォトの打ち合わせは
他のスタッフのスケジュールもあるから
何とも言えないけど、
できるだけ火曜は避けるから」



やっぱり、意地悪なように見えて
広臣さんは優しい。

私の話をちゃんと聞いてくれるし、
今日は強引に連れ出されたけど
行きたかったカフェに連れて行ってくれた。

こうして登坂邸の庭園を
好きなだけ眺めていられるのも、
広臣さんのおかげだ。

広臣さんと婚約しなければ
お祖父様がお庭の手入れを
見せてくださると言うこともなかったし、
こんなに楽しい時間を過ごすこともできなかった。

もうあの無体な振る舞いのことは忘れよう、と
心の中で思っていると、
ふと目線を上にずらした広臣さんが
私の髪に触れた。

「花ついてた」と手を差し出されると、
広臣さんの手のひらに
小さなうすピンクの花が乗っているのが見える。

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