この花を君に 3

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「あの女が一番ほしいものを
あてがっといたからもう大丈夫」

「何だそれは。金か」

「いーや、男だよ。
あの女、ハイスペな男と結婚したいらしいから
お似合いの奴何人か回しといた」

「そうか。
しかし、後始末が終わったからといって
Aさんの気が済むかというとそれは別の話だ」



お祖父様はアマリアさんのことで
私の機嫌が悪いのだと
勘違いなさっているようだけど、
本当はその後広臣さんが
無体なことをしでかしたせいなのに、
自分からそれを言うのは恥ずかしくて
口を挟めない。

抗議するためにつないでいる手を引っ張って
広臣さんを睨むと、
なぜか満面の笑みで見下ろされた。



「ごめんって。ほら、ガゼボでお茶するんだろ？
今ならその辺でバラも咲いてるし、
ゆっくり散歩しよ」



そう言った広臣さんが踵を返し、
外へ私を連れ出す。

後ろからお祖父様と、
カヌレとティーセットをワゴンに乗せた
富貴子さんがついてきて、
個人の邸宅のものとは思えない規模の
庭園の小径を歩いた。





あちこちに咲き始めのバラが生えていて、
どれも可憐な色でうっとりしてしまう。

中には見たことのないような形や色のものもあり、
広臣さんの手を引いては立ち止まった。

まだらに濃いピンクが入った
うすピンクのバラは特に可愛らしく、
いい香りがする。



「それはバランゴという品種のものです。
キャンディー菓子から名前を取ったそうですよ」

「だからこんなに可愛らしいんですね……
素敵です」



後ろから解説してくれるお祖父様にそう返し、
うっとりと見とれる。

私のせいで全然先に進めないというのに
広臣さんもお祖父様も富貴子さんも
文句ひとつ言わず、笑顔で待っていてくれた。

広臣さんにモヤモヤさせられていたことも忘れて、
初夏の庭園の美しさを堪能する。

ここのお庭にはめずらしい品種のバラが
たくさんあって、
お祖父様にいろいろ教えてもらいながら
散歩をするのは本当に楽しかった。

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