この花を君に 2

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「若先生！
ありがとうございます。
今日のお花、すごく素敵で
見とれちゃいました」

「それはよかった。
いいお祝いになったかな？」

「もちろんです！
あの菖蒲の葉の配置が絶妙で。
生き生きとしていて、躍動感があるのに
ちゃんと主役がバラになっていて、
素晴らしいです」



中央に飾られている大きな作品の魅力を
興奮して語っていると、
後ろから腰に手を回されてぎょっとした。

反射的に身を引くと逆に抱き寄せられて、
「これはこれは、若先生」という
広臣さんの低い声が上から聞こえる。



「本日は早い時間から
作品を設えていただきありがとうございます」

「……いや、ふたりの門出のために
役立ててもらえてうれしいよ」



広臣さんと若先生が話し始めたのに、
内容が頭に入ってこない。

腰に当てられた柔らかな手の感触と、
背中に当たる広臣さんの温かな体の感触が
落ち着かなくて、どぎまぎしてしまう。

婚約者ならこの程度の接触は
普通のことなのかもしれないけど、
慣れていない私にとっては大変な事態だ。

手をつなぐのはまだいいけど
こうして腰を抱かれるのは
私にはハードルが高すぎる。

何とか離してもらえないかなと思って体をひねり、
広臣さんの顔を見上げると
「ん？」と優しく微笑まれた。



「あの、広臣さん……」

「なに？」



ここで離してほしいと言うと、
婚約者らしくなくて怪しまれるかもしれない。

かといってこのままくっついていることを考えたら
頭がパンクしそうで、
耳元に顔を寄せて小声で
「こういうの、緊張します」と囁いた。

それを聞いた広臣さんが可笑しそうに笑い、
同じように耳元で
「ちょっとだけ我慢して」と囁き返す。

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