この花を君に 2

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「こちらへどうぞ。
会長がお待ちです」



山下さんに案内されて、ホワイエに赴く。
そこには広臣さんのお祖父様、
お父様、お母様がいて、
お祖父様は私の姿を見た瞬間
うれしそうに笑った。



「やあAさん、こんばんは。
学校帰りにすまないね」

「いえ、本日はお父様の会長就任と
広臣さんの社長就任、おめでとうございます」

「いやいや、そんなのは付け足しだ。
今日のパーティーは
ふたりの婚約披露がメインだからね。
挨拶ばかりで大変だがよろしく頼む」

「はい、がんばります」



そう答えると、広臣さんがつないでいた手を
励ますようにきゅっと握ってくれる。

背の高い広臣さんを見上げて微笑むと、
優しく微笑み返してくれた。



「……だらしない顔だな、広臣」



苦々しげな声が聞こえてそちらに顔を向けると、
しかめ面をしたお父様が広臣さんを見ていた。

大柄なお祖父様や広臣さんに比べると
お父様は小柄で線が細く、覇気がない。

だからなのか、広臣さんは全く動じていない様子で
「自覚はあります」と返した。



「ははは、そりゃあこれだけ可愛らしいお嬢さんと
結婚できるのだから
顔が緩むのも仕方ないだろう。
男の嫉妬は見苦しいぞ、貴之」

「……」

「では行こうか」



お祖父様がみんなにそう声をかけ、
会場に向かって歩き出す。

お祖父様はお父様より高齢なのに
堂々とした佇まいで、威厳があった。

広臣さんはやっぱりお祖父様に
とてもよく似ているのだなぁと思いながら
ついて歩き、会場の中に入る。

凛とした花で飾られた空間に、
若先生らしさを感じて胸が弾んだ。

中央に一際大きなフラワーアレンジメントがあり、
可憐なバラの隙間を縫って
菖蒲の花や葉が躍動感たっぷりに生けられている。

その華やかさと凛々しさがまさに若先生らしく、
しばらくうっとりと見とれた。



「さすがだよな」

「はい……言葉もありません」

「若先生、あとで挨拶来てくれるって。
こっちおいで」



広臣さんに手を引かれ、
名残惜しくその場を離れる。

だんだん人が集まってきた頃を見計らって
パーティーが始まり、
しばらくは見知らぬ人が
次から次へと挨拶にやってきて
愛想笑いを顔に貼り付けた。

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