この花を君に 2

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「あ、そうだ。
婚約披露パーティーの話なんだけど」

「はい」

「お前のヘアメイクは
こっちでプロにやらせるから、
母親にそう言っといて。
当日早めに迎えに行く」

「分かりました」

「会場のフラワーアレンジメントは
小林の若先生にやってもらうことになったから」

「わぁ、それは楽しみです」



お稽古中、若先生とは私的な話を全くしないので
婚約のことも広臣さんのことも
何も伝えていないけれど、
会場のお花を生けてくださるのなら
そのことはご存知なのだろう。

私の好きな花材を使ってくださったら
うれしいなぁと思いながら
パンケーキを食べていると、
ニコニコ笑っている広臣さんに
見つめられていることに気づいて恥ずかしくなる。



「婚約の話したら、若先生びっくりしてたよ。
怒られた」

「えっ」

「『年端もいかない女の子をたぶらかした』だの
『高校生に手を出すのは犯罪だ』だの、酷いよな。
なんで俺がたぶらかした方って決めつけられんの？
お前が俺をたぶらかしたのかもしんないのに」

「それは絶対ないと思います……」



若先生には子供の頃からお世話になっているから
私のことをよくご存知だし、
年上で経験豊富そうな広臣さんを
子供の私がたぶらかすなんて
普通はできないと思うだろう。

とはいえこの『契約』のせいで
広臣さんが悪し様に言われるのは
申し訳なくて謝ると、
「いや、気にしてないけど」と笑われる。



「もしこれが『契約』じゃなかったとしても、
婚約してんだからいいじゃんね。
女は16歳から結婚できるんだから、
お前が本当にしたい相手とするんなら
今からだって何の問題もない」

「……はい」

「もし結婚したい男がいるんなら、
いつでも言って。
進学とか就職とかじゃなくて、
養ってくれる男と結婚するんなら
それはそれで協力するから」



優しくそう言われた瞬間、
なぜか胸がちくりとする。

今の生活で結婚したい男性なんて
見つかる訳ないのに、と思ったけど、
「ありがとうございます」と頭を下げた。

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