この花を君に

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「若先生、怖くない？」

「いえ、全く。
いつも優しく指導してくださいます」

「若い女には優しいのかなー。
やべ、こんなん言ってんのバレたら怒られるな。
内緒にしといて」



広臣さんが人差し指を口の前に立てて、
冗談っぽくそう言うので笑ってしまう。

すると広臣さんも可笑しそうに笑い、
ハンドルを握り直した。



「けどさ、安心した。
ただのお人形さんじゃなくて」

「……え？」

「ちゃんと好きなことあるんじゃん。
そんなに花が好きなら花に携わる仕事すればいい」

「花に携わる仕事……」

「花屋とか。
庭に花植えたいなら
造園業やってる会社に就職するとか。
小林の若先生みたいに
華道家目指すのもアリだと思うし、
誰も見たことない花を作りたいなら
品種改良が学べる大学に進学したらいい。
あとはフラワーデザイナーになって
イベント会場の
フラワーアレンジメントやるとかもあるな」



たくさんの仕事を提案されて、驚いてしまう。

世間知らずの私は
花に携わる仕事がそんなに多岐に渡るなんて
知らなかった。

今まで指導していただいたことを考えると、
若先生のような華道家になれたら
かっこいいだろうなぁという憧れはあるけど
そんなにもたくさん仕事があるなら
他の選択肢を考えてみるのもいいかもしれない。



「もしなんかやりたい仕事あるんなら、
ツテ辿って紹介できるかもしんないし。
大学行くなら学費出すし。
時間あんまないから決まったら早めに教えて」

「はい……」



自分で進路を考えろと言われた時は
どうしようと途方に暮れてしまったけど、
広臣さんの提案は魅力的で、有り難かった。

この先のことはまだ何も決まってないけれど、
少しは明るく
未来を考えられるようになった気がする。

今日1日とても優しくしてもらえたことがうれしくて
「ありがとうございます」と
心を込めてお礼を言うと、
広臣さんはちらりとこちらを見て微笑んでくれた。

☆ありがとうございます☆→←18

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