この花を君に

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「怖い夢見ておねしょしたの、
何歳の時って言ってたかなー」

「や、やだっ！やめてください！」



またあの腹黒い兄に情報をリークされたらしい。

これ以上恥ずかしい話をバラされたくなくて
顔を赤くしながら止めようとすると、
「こら、やめんか」と
厳しい表情を浮かべたお祖父様が
広臣さんをたしなめてくださった。



「私よりお前の方が下品じゃないか。
こんないたいけなお嬢さんに何てことを言うんだ」

「はいはい、ごめんごめん。
でもさぁ、こいつの兄貴が
聞いてもないのにしゃべってくんだよ。
まあ好きなもんとか、
いつも何して過ごしてるとかも教えてくれるから
いいスパイなんだけどさ」

「……そういえば、
お前がAさんを見初めたきっかけは
岩田くんだったな」



お祖父様の言葉に、
そういう設定になっているのかと驚いてしまう。

広臣さんから請われて
婚約したという設定にするなら、
ここに来る前に教えていてほしかったのに。

上手く話を合わせられるか
不安になっている私とは違って、
広臣さんは「そーだよ」と平然と返した。



「まさか友達の妹にそんな気になるとは
思わなかったわ」

「よかったじゃないか、
結婚の申し込みを受け入れてもらえて。
ああ富貴子さん、すまないが
ロールケーキのお代わりをくれないか」

「まあ！かしこまりました。
すぐにお持ちいたします」



弾んだ声を上げた富貴子さんが戻っていくと、
お祖父様はカップに注がれた紅茶に口をつけた。

それに倣って私も紅茶を口に含むと
味に癖がなく香り高くて、おいしさに頬が緩む。

ダージリンだと思われるその紅茶は
いちごのロールケーキにもよく合っていて、
交互にいただきつつおいしさを堪能していると
ふと視線に気づいた。

顔を上げるとお祖父様と広臣さんが
微笑ましげに私を見つめていて、
その表情のそっくりさに驚いてしまう。

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