この花を君に

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「車酔いはしないので
大丈夫です。
お気遣いありがとうございます」

「……さすが岩ちゃんの妹。
礼儀正しくて真面目だねー」



隆二さんに感嘆したように言われて
恥ずかしくなる。

岩ちゃんというのは兄のあだ名なのだろうけど
礼儀正しいのは表向きだけだ。

兄は外では王子様ぶっているけど、
家ではだらしない。



「岩ちゃんと雰囲気は似てるけど
よく見たらあんま似てないね」

「そうですか？
年も離れてますし、
あと性別が違うからでしょうか」

「いやなんかさー、
岩ちゃんもお姫様も品があるっつーか
高貴な血が隠せてない感じがすんじゃん。
そこは似てるけど、顔があんま似てない」



隆二さんの言う
『高貴な血が隠せてない感じ』というのが
よく分からなくて、困惑する。

すると、広臣さんが横から
「隆二、しゃべりすぎ」と呆れたように言った。



「現役JKに浮かれてんじゃねーよ。ロリコンが」

「ちょ、ロリコンとか言うのやめてよ。
これから何回もお姫様の送り迎えすんのに
警戒されちゃうじゃん」

「警戒しとくぐらいでちょうどいいだろ。
お姫様が悪い狼の餌食になったら
岩ちゃんに顔向けできなくなる」

「悪い狼は臣の方じゃん！俺はライオンだから♡」

「なんだこいつ、意味分かんねー。
ライオンって何だよどっから出てきたんだよ」



危なげなく運転しながらも
広臣さんとポンポンやり取りをする
隆二さんがすごいやら可笑しいやらで、
思わず笑ってしまう。

すると横の広臣さんが息を呑み、
隆二さんは「お姫様が笑った！」と叫んだ。



「やべ、めっちゃ可愛い。
こりゃ岩ちゃんがデレデレすんのも分かるわ」

「……」

「なぁ臣。臣ー？なに急に黙ってんの」

「……うるせぇな」



隆二さんがからかうように声をかけると
広臣さんはむすっとくちびるを尖らせた。

拗ねたようなその表情が子供みたいで、
広臣さんみたいな大人の男性でも
こんな表情をするのだなとちょっと驚く。

いい年して子供みたいに拗ねてみせるのは
うちの兄だけかと思っていた。

広臣さんは兄と密かに仲よしらしいので、
類は友を呼ぶというやつなのだろうか。

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