B11 ページ2
さちやの誘拐物語
*
「ねえ見て、世間はキミのこと探し回ってるみたい。」
『…お願いッ、もうやだ、帰りたい…！』
怯えながらそんなことを言うキミに、ますます愛情と加虐心が溢れる。
それと同時に腹が立つ。
俺がキミのこと愛してるならキミもそれと同等に愛さなきゃダメでしょ。
「はは、まだそんなこと言ってるの？」
『ッ、ひ…』
「ねえ。」
俺はキミに馬乗りになった。
「嘘だよね。そんなこと思ってないよね。」
『ごめんなさい…ごめんなさい、思ってないから…許して…』
そうだよね。俺に謝るべきだよね。キミの両親から救ってあげたのは俺なんだよ？
悪い子。
「謝れて偉いね、いい子だね。」
できるだけ優しく柔らかい声で囁く。
まるで、洗脳するように。
「愛してるよ。」
月日が経つと、Aは俺を愛してくれるようになった。
『さちや、さちや！！ねえ、どこいったの！！』
「どうしたの。」
『さちやっ、どこ行ってたの…』
「あは、ご飯買いに行ってただけだよ。ほら、Aが小さい頃から好きなメロンパン。」
『何も言わないで私から離れないで…心配した…。』
涙ながらに訴えるA。
「んふふ、ごめんね。ほらっ、見て？俺の好きなクリームパン売ってた。」
『…ぁ、本当だ。さちやは小さい頃ずーっとクリームパン食べてたよね。』
さっきまで泣いていたはずのAは俺の話をするとすぐ笑顔になってくれる。
『さちや…これからもずっとそばにいて…。』
「もちろん。愛してるよ、A。」
『私も、愛してるよ。』
俺たちはお互いに呪いの言葉を囁いた。
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作者名：変人 | 作成日時：2023年12月24日 12時
