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白基調の廊下。突き当たりを左に曲がって二番目の部屋に彼女はいる。
ノックをして横引きのドアを開けると 、あの日のように 鉛筆を動かしている姿が目に入った。
「少しは落ち着いたか?」
ベッド脇のパイプ椅子に腰を下ろすと、相変わらず視線は絵に向かっていたが コクリと一回頷いた。
何を描いているのかと覗き込んで見ると、どこかもの悲しげな少女の顔。
あの日見た、彼女の肖像画と全く同じだった。
「これ__________」
コンコンッ
「失礼します。レインズさん、包帯の交換に来ました。」
言いかけたとき、看護師が入ってきた。
彼女が、初めて視線を外す。
今までは俯いていたのと、髪で隠れて見えなかったが首に、白い包帯が、ぐるりと一周回っていた。
「あ、今日も描いているの?いつ見ても上手ね。自画像。」
シュルシュルと包帯が外れていく。
白い首に似つかわしくない、赤くミミズ腫れになった傷口が、三日月のように弧を描いていた。
あまりの生々しさに思わず視線を逸らす。
終わるまで席を外そうと立ち上がったとき、スラックスを僅かに引かれた。
外した視線を、また彼女に戻す。
首を少し上に向けて、大人しく包帯を巻かれる彼女。 「行くな」と訴えているのは言われずともわかった。
「はい。終わったよ。何かあったら、ナースコールで教えてね。」
じゃあ。そう言って、会釈をして出て行く看護師に俺も軽く会釈して返した。
残されたのは、二人だけ。
また描き出すのかと思いきや、彼女はそれ以上鉛筆を手に取ろうとはしなかった。
ただ、ぼんやりと秋晴れの日差しが柔らかい空を小さな窓から眺めていた。
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三日月せつな(プロフ) - 貴方の作品が好きです、頑張ってください。 (2018年10月11日 20時) (レス) id: 0c21cbd17a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:amespi1224 | 作成日時:2018年9月29日 18時