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と雇用リストの中に混ざっていた、Aの履歴書を思わず読み込んでしまった。
その履歴書は履歴書としてはとても異常であったが
彼女の全てを物語っていた。
というより、もしかしたら彼女の唯一の過去を表している、そんな気さえした。
証明写真に写るAは生命力を感じさせず、ただ与えられた心臓を動かすだけの道具のようにも見える。
よくよく考えてみたら、Aは特定の誰かといる時しか明るい顔を見せていなかった。
私が出会った頃、それをみてまるで仮面の様だったのを鮮明に覚えている。
証明写真のAに生命力を感じないのはそのためだろうか。 仮面をつけていて、本当の顔ではない…。
謂わば、道化師の様なことをしている。
ふと、私より長くいたであろう胃がムカムカする顔が浮かんだ。
…君なら知ってるとでも言いたいのかい。
私はむっ、とした。
その時、
「太宰さーん」
と、Aの声が聞こえる。
まるでそれ以上考えるな、と云わんばかりの絶妙なタイミングだった。
「なんだい?」
「新しい新人が来るみたいですよ」
そう云うとこちら側に来て、耳打ちをした。
「この前、バイトの面接の面接官の一人になったんですよ。太宰さんが出張の時。
国木田さんも乱歩さんも居ないもんで、社長から谷崎さんと二人でやれって云われたんで…。」
その子、そういえば___
手首に痣ありましたよ。
その言葉はとてもウキウキしていたのがわかった。
「魔女、とでも云いたいのかい?」
「おっ、太宰さん声が跳ねてますよっ。
はい、もちろんっ」
「そう云う君もかなりウキウキしているよ」
そう笑った。
そして付け足すように、
「そろそろ来るはずです。」
と云った。
「あれ?国木田君には聞いてないけど…」
「あれれ…?忙しくて忘れてたのかな…。」
と、探偵社の扉が開いた。
そこには国木田くんと、見たことのない少女がいた。
「こんにちわ____」
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作者名:ミュータント菌 | 作成日時:2019年5月19日 19時